第4話 スポーツデイ

 この高校では、毎学期に「スポーツデイ」というものがあるらしい。早い話がクラス対抗のスポーツ大会だ。1学年に4クラスあり、学年ごとに種目が違う。

 今回の1年生は男女ともバレーボールだそうだ。体育の授業だけでなく、放課後などにも練習する。1クラスから複数のチームを作る。

 オレたちのクラスは、くじ引きでランダムにチームを決めた。賢斗と同じチームになった。賢斗は運動神経がすごくいい。オレは普通、まあまあといったくらいだ。


 小さい頃から賢斗にくっついてサッカーやバスケなど、いわゆる球技をやってきた。賢斗のすごさをカッコイイと思っている。

 オレもかっこよくプレーしたいとは思うが、そう簡単にはいかない。でも賢斗はそんなオレのことをサポート役が上手い、大事な役割だと言ってくれる。

 バレーボールは経験がないが、一生懸命に頑張ってみようと思う。せっかくやるのだから、とことん挑戦してみればいい。失敗してもフォローしてくれる仲間がいるし、その経験は決して無駄にはならないはずだ。


 侑衣は運動が得意なのかどうか聞いてみた。すると、小さい頃からずっと剣道を続けているらしい。今の段位は三段で、二段になった後に全国大会で複数回にわたり優勝したことで、優秀な成績と認められたので昇段したそうだ。

 それを聞いて、侑衣はとてつもなくすごい人なんだなと思った。カッコイイと思ったし、心の底から尊敬した。


 いざ、バレーボールの練習をしてみると、ポジションごとにそれぞれ大事な役割があるんだなということがわかった。賢斗は何本もスパイクを決めていた。ジャンプ力や瞬発力がとてもすごかった。

 オレはあまり前に出るのは向いていないようだ。ただ、ボールに必死で食らいつくことを意識した。サーブでは方向や高さなど、どうしたら相手がレシーブを返しづらいかを考えるようにした。

 すると、どうだろうか。サービスエースを少なくない本数、決めることができた。オレでも活躍出来るかもしれないなと、とても嬉しくなった。


 そんな様子を見ていた侑衣が声をかけてくれた。いろいろなアドバイスをくれたし、褒めてくれた。仲間の絆があれば、きっと頑張れるはずだ。

 侑衣がオレのことを見てくれていて、すごく嬉しかった。最高の仲間に囲まれた幸せが、いつまでもずっと続いていけばいいなと思った。






 大会当日まで、あと1週間を切った。この頃には、チームの絆はよりいっそう強固なものになっていた。みんなが優勝を目指して練習に取り組んでいた。その様子は言葉通り真剣そのものだった。

 みんなが声を出しあって連携し、お互いにフォローし合う。理想のチームが出来上がっていた。数ヶ月前に入学式を迎えて、初めて出会ったメンバーだとは思えなくらいに、関係が深く築かれていた。

 きっとうちのクラスだけではなく、他のクラスも同様に関係性を築き上げていることだろう。だから油断は禁物である。実力を過信すると、痛い目にあうかもしれない。


 しっかりと戦略を練って、相手の動きを読みつつ瞬時に判断しなければならない。フェイントに惑わされることもあるだろう。

 臨機応変に対応できるようになるためには、知識と経験が必要だ。部活等でバレーボールをやっている訳では無いので経験は期待できない。できる限りの練習をして、少しでも慣れるしかない。

 知識は努力すればするほど、蓄えることができる。セオリーどおりにいかないことも少なからずある。むしろ、その方が多いかもしれない。想定しうるケースを考えて、しっかりとした対策を練っておく。これがとても重要なことだ。







 いよいよ、スポーツデイ当日になった。不安と期待が入り交じっていた。どうせ誰かと競うなら、やっぱり優勝を目指したい。

 練習の成果を存分に発揮できればいいなと思う。もちろん、ケガ無く終わることも大事だと思うけど。

 スポーツなどで身体を動かすと、リフレッシュした気分になる。いい汗をかいて、心身共にスッキリする。運動が大事だなと思う。精一杯頑張りたいと思う。


今回のバレーボールはトーナメント形式で行われるそうだ。各クラスから2チーム、計8チームの戦いになる。


 トーナメント形式なので、負けたら終わりだ。絶対に勝たなければならない。チームの絆を見せつけることができればと思う。これまで一生懸命に練習に取り組んできた。その成果を発揮したいところだ。うちの学校には男子のバレーボール部がないので、ほぼ対等といったところだろう。




 まずは全体での開会式から始まった。スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と競技するようにとの話があった。とても大事なことだな。反則して勝っても嬉しくない。


 競技会場に移動して、ルール説明があった。通常とは異なり、サーブ権が移動する事にポジションが時計回りに移動する。そして右前衛の人はコート外に出て、新しく1人がサーブの位置に入る。これを繰り返す。チームの全員がプレーできるようにという配慮だ。


 体育館は3年生のバスケットを優先するため、オレたちは運動場で競技する。サッカーがないので空いているそうだ。事前に支柱を立てるための穴を開けておいたりなど、いろいろな準備をしていたようだ。




 初戦の準備になった。軽いアップや準備運動を行った。みんな体調も良さそうだ。試合前に円陣を組んだ。


 いよいよ試合が始まった。対戦相手も気迫がみなぎっている。熱い戦いになりそうだ。必死にボールに食らいついていく。みんなでしっかりと声をかけあい、連携の取れたプレーを心がける。


 点の取り合い、取っては取られての繰り返しが続いた。なんとか連続で点を取りたいとの思いで、必死に食らいついた。




 なんとか初戦を制することができた。ギリギリではあったが、みんなの力を合わせて勝つことができた。


 チーム数が少ない分、あと2回勝てれば優勝になる。とはいえ、かなり手強い相手になることだろう。気を引き締めていかなければならない。


 次の相手はバレーボールではないものの、他の球技で1年生でありながらレギュラーの座を獲得するほどの腕前だ。


 だからといって、試合前から諦めるなんてことはありえない。どんな相手でも必死に戦うだけだ。





 準決勝に勝つことができれば、2位以上が確定する。もちろん、優勝を目指すのだけど。


 試合が始まってすぐさま相手がサービスを決めてきた。ボールに触れるのが精一杯だった。とても打ち返す余裕は無かった。


 なにか攻略法があるはずだ。なんとか食らいついて、糸口を見つけようと思った。よりボールの動きを注視することにした。相手の手の動きや体の向きもヒントになるのではないかと思った。


 しっかりとみんなで声をかけあい、ボールの方向や回転を読んで動いた。みんなの力を合わせて、なんとか勝つことができた。




 次はいよいよ決勝戦だ。かなり手強い相手だが、目指すは優勝すること、ただ1つだ。今まで練習してきたことの意味がハッキリすることになる。


 決勝を前に円陣を組んで、心をひとつにした。全力でプレーするのみだ。


 みんな諦めずにボールを追いかける。なんとしても相手コートに返そうともがく。点の取り合い、攻防が続いた。


 オレたちのチームがやや劣勢だ。でも最後まで諦めない。逆転を信じてプレーする。なんとか持ちこたえて反撃を狙いたい。


 突然に訪れるチャンスを逃してはならない。ついに絶好の機会が訪れた。なんとか逆転することに成功した。なんとかこの優勢をたもちたい。







 みんなで必死に食らいついて、優勝することが出来た。喜びはひとしおだった。頑張ってきたかいがあった。しっかりと結果に残すことができた。


 貴重な経験をすることができた。絆の深まりを感じることができたと思う。スポーツの力は大きいと感じた。




 女子の方は準優勝だったらしい。嬉しいけど、決勝で負けたからやっぱり悔しいと侑衣が言っていた。あと一歩のところで優勝を逃したのだから、それも当然のことだろうと思う。


 すごく充実した1日だった。体を動かしてスッキリした。爽やかな気分になれた。


 スポーツデイは毎学期にあるらしい。2学期も楽しみだ。

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