第8話 ケモミミタッチ作戦
ケモミミにさわりたい……!!!
その欲望に歯止めがきかなくなった。
毎日毎日前の席で、時には繊細に、時には大胆に動くそのケモミミを凝視し続けした結果、視覚が触覚を要求し始めた。
どうにかしてさわる方法はないかを考えた。
まず、一番に思いついたのは朝だ。
溝口は基本的に朝は寝ている。
俺は窓から外を見ようと自然と動き出す。そして、寝ている溝口の机の前を通って歩き、投げ出されているケモミミに意図せず手が自然に触れてしまう・・・これが名付けて「ケモミミタッチ」作戦の全容だ。完璧だ。
早速実行に移した……が、失敗した。
溝口の頭付近を通行しようとすると、奴はケモミミを抱え込んでしまう。
どうやらクラスメイトの登校を察知した時と同様の仕草をとられているようだ。寝ながら自然にやってるの、凄くないか?
……ということで、現状の席順体制ではこの作戦の遂行は不可能だ。
席替えで溝口の前の席になれば、より自然に溝口のケモミミ前の通行が可能になるかもしれないが、可能性でしかないのと、なにより後ろからなんの制限もなくケモミミを監視し続けることが不可能になる。リスクとリターンを考えると難しかった。というか席替えは自由にできない。
当たり前だが起きている溝口には近づけない。なにか警戒をされているようだ。ああ見えて意外に用心深いのかもしれない。
早速手詰まりかと思いきや、もう一つ可能性がある。
それは昼休みの屋上だった。
溝口は朝寝で寝足りない場合、早弁を済ませると昼は速攻で屋上に行き、隅にある荷物置き場の屋根で寝る。
その寝ている溝口のケモミミをなんとかしてさわろうという作戦だ――!
思いついたら即実行ということで、溝口の早弁、そしてその後昼休みに屋上へ向かったのを確認した後、しばらくの時間をおいてから屋上に向かった。ケモミミをさわろうとして眠りの浅いうちに起きられては困るからだ。完璧な作戦だ。
かくして屋上に到着、隅にある荷物置き場へ速やかに直行した。
柔らかな日の光が照らし、爽やかな風が吹き抜ける快適な気候だが、そこまでして空の近くで寝ることになんの理由があるのだろうか、高いフェンスがあるとはいえ、高所恐怖症には生きた心地はしないだろう。
まあ今はそんな周りの状況よりケモミミタッチだ。
荷物置き場に到着し、直上を見ると……なんと、ケモミミが屋根からせりだしていた!
息を潜めて観察を続けると、朝寝時にも見られたミミピク(ケモミミがピクピク動く)の現象が見られた。
……よし、間違いなく寝ているな。機は熟した。
意を決してすぐ横にあるはしごを登り、屋根に手をかけた。
――そこで気づいた。
どうやって自然にさわるのか?
ここからケモミミをさわって溝口が気づく。
隠れるところはない。
溝口と目と目があう。
……ジ・エンドだ。
なんてことだ、ここまで来てこの気持ちよさそうなケモミミを見つめ続けることしかできないのか。
……まあ同じミミピクでもシチュエーションが違うこれはこれで良いが。
だがしかし、今日はさわりにきたのだ。
ケモミミをさわるため、入念に下調べし、完璧なタイミングでここまで来たのだ。
なんとかしたい、なんとかならないか。
なんとか……
「う~ん」
その時、ケモミミが動いた。
溝口が寝返りをうったのだ!
ケモミミがこちらに向かって弧を描き――、
――そして、屋根に手をかけていた俺の右手にビタッと着地したのだった。
かくしてケモミミタッチは、様々な困難や驚きの展開もあったが無事成功した。
ちなみにその時の溝口の声は、こんな感じだった。
「ぅふわぁあああ!?」
ミミがケモの同級生 zakky @kakuzaki
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