第5話 ケモミミの巫女服

 振り向くと、そこには金髪、切れ長の目、ケモミミ……そして、見知った制服制服姿では無く巫女服姿の奴がいた。

「溝口……」

「聞こえなかったのか? ひとんちまでなにしに来た?」

「いや、まあ……散歩、かな?」

「散歩だあ?」

 まずい、見つかった。どう取り繕うか……と考えたが、別にやましいことをしてるわけじゃ無い(変身シーンが見たいとか変な妄想はしてたのがやましいと言えばやましいが)ので、ありのまま正直に話すことにした。

「神社があるだろ、ここ。ちょっと行ってみたくなったんだ」

「どうやってここまで『これた』んだよ?」

「金城が……あ」

 しまった、金城の話は隠すべきだったか。耳に入ってきただけだし。

「桜が!? あいつ、しゃべったのか!」

 溝口の耳は絞られながら後ろに倒れた。その状態が怒っているサインだとは今までの言動でわかっていた。

「いや、しゃべったわけじゃ無い。隣で話してるのが聞こえたんだ」

「は? 聞き耳立てるとかクソかよ」

「すまん、でもこの神社、人が寄りつかないんだろ? ちょっと行ってみたかったというか、興味が出たんだ」

「神社の奥にあるここまで来る必要はねえだろ?」

「それも……細くて通れそうな道があったから、興味で……」

「あれもそれも興味か。ガキかよ」

 切れ長の目を鋭くとがらせてコチラを睨む溝口は迫力満点だった。だが、耳は少しいつもの位置に戻りつつある。悪気がないことが伝わったのだろうと思いたい。

「ここはひとんちの敷地だ。用がないならさっさと帰れ。警察呼ばれてもしんねえぞ」

「わかった、じゃあ」

 大木と民家を背に来た道を戻ろうとしたとき……鳴き声のようなものが聞こえた気がした。

「はぁ!? 家にあげろだあ!? んなことするわけねえだろかーちゃ……あ!?」

「……かーちゃ?」

「う、うるせえ! もう一つ言っておく、人の会話勝手に盗み聞きするんじゃねえ! あたしらの会話が始まったらできる限り耳塞げ! できれば遠くに行け! もし聞いちまったら忘れろ! もしくは謝れ! 今後できなかったら脳天かち割ってやる、いいな!」

「お、おう」

 もう一つと言った割に大量の要求が来た。これ以上要求が来る前にさっさと退散しよう。

 帰り際、登りばかりに見える山を下る。その途中印象に残ったのは、巫女服姿とケモミミの相性の良さを再確認できた溝口の立ち姿だった。

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