第3話 ケモミミとの出会い

 俺は部活に入っていない、帰宅部だ。

 運動系が苦手なわけでも、文系に興味がないわけでもない。それ以前の問題というか、みんなで協力していい成績を上げて喜びを分かち合うとか、部活に打ち込まないけど部活仲間という友達の集まりの中で日々を楽しく過ごすとか、そういう学生の『青春』的なものが肌に合わない気がしている。

 だから、一人になれる場面は一人になっている。もちろん学園祭とかクラスで手分けしてやらないといけない行事については、最低限の協力はしている。クラスメイトも空気を読んでくれているようで、とても助かっている。物語の世界だとそこら辺の空気を読まずに干渉してくるクラスメイトが一人ぐらいはいるが、現実はこんなものだ。ひたすら普通に時は流れていく。

 ――そんな中、溝口の存在は異質だった。

 ヤツは一匹狼だった。

 2年生になった時のクラス替えで同じクラスになった。明るい髪をなびかせ、制服を着崩し、イスの上であぐらをかいたり寝たりひたすら服装と態度の悪いヤツだった。

 当たり前のように教師連中からは目をつけられていたが、成績はそれなりに良く、学内でも学外でも問題行動を起こしたことはないので、黙認されている状態だった。

 触らぬ神に祟りなし……いや、単に関わらなくていいならそれに越したことはないというぐらいの話だ。

 ヤンキー優等生の溝口の放課後だが、大体は適当に遊んでから家に帰っているみたいだった。

 金城と仲がいいので彼女がいる時は遊んでから帰り、一人の時はゲーセンが主な出没地区で、格ゲーしたりメダルゲームをやってから帰って行く。

 家は教室での雑談で耳に入ってくる限り(別に聞き耳を立てていたわけではない)、神社の近くらしい。金城がお参りするらしいが、溝口は全然手を合わせたりしないらしい。バチが当たると言われてもツーンとしているとか。なお溝口の家には上げてくれないらしく金城は悲しんでいた。

 あのケモミミ、そして神社……なかなかに怪しい組み合わせだと思っている。神社にまつられている神獣的ななにかの化身が人の姿を得て女子高生に……漫画な世界が目の前に広がっている。

 あとをつけてあるかわからないが変身シーンとか目撃してみたい気持ちはあるが、もし今の妄想が全く関係ないとなるとただの気持ち悪いストーカーに成り下がり、ばれたら親を呼ばれて次の日から学校どころかお日様の下を歩けなくなる可能性さえあるので、今のところは普通に過ごすしかない。なにかきっかけが欲しいところだ。

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