9話



意識が戻ると、目の前に男性と思わしき人が立っていた。

フードを深く被っていて、男の顔が見えない。


(どーゆー状況だ?雪音にいきなり凍らせられて、

あたりは、水草や魚のいない水の中。

目の前には危ない人。骨格からして多分男だ。)


男は、俺が起きたのを確認して話しかけてきた。

「なにゆえ、力を求める?」

男の声は低く響いた。



「は?」

(なぜ俺は、こいつの言葉を理解できるのだろうか?)

俺は、男の質問に答える。

「生きるため。弱いと生きていけない。」


男は、次の質問をした。

「なぜ生きたい?」


(なぜって、なんだ?生きたいのに理由なんか居るのか?生存本能?)


沈黙が続く。


シュッ


すると突然男は、剣を取り出し俺を真っ二つにした。


(凍らされたり切られたり今日は、散々だなぁ)


目を開くと俺は教室にいた。

俺は、勢いよく立ち上がった。

人間になってる....。

周りの人間の視線が俺に集まった。

「どーした?*** トイレか?」


(なんだ。一部聞き取れなかった。)


そして俺の口が勝手に動き出した。

「すいません。ちょっと怖い夢を見てしまってびっくりしちゃいました。」


「授業中寝るんじゃありません。授業に戻ります。」


黒板の目の前にいる人間が、黒板に何かを書き始める。


「すみません。」

俺は頭を下げて椅子に座る。

(わからないことの連発で、気が狂いそうだ。しかし何故だろう。懐かしい感じがする。)


カーンコーンカーンコーン

チャイムがなる。


「今日は、ここまで。来週期末があるから復習しとくように。」

そう言って、黒板の前にいた人間が教室から出て行った。


「なぁ***、急に立ち上がったりしてどうしたんだよ。」

「***くん。大丈夫?」

「***くん。体調悪いなら保健室連れて行こうか?」


人間が集まってくる。心配されている事は、なんとなく理解できた。

そしてまた口が勝手に動く。

「みんな心配してくれてありがとう。でも俺全然元気!」

(自分の意思で行動できないって事は、俺の過去の記憶って事かな?...こんなに話しかけられるなんて俺人気者じゃん。)


自分の過去の記憶と理解してから記憶が少しづつ戻る。この後、カラオケに誘われるんだったな。

「なぁなぁこの後、カラオケ行かね?」

短髪の男の子が話しかける。


「行きたい行きたい!喉枯れるまで歌い尽くすわ。」

(確かこの時、本当は家に帰ってテスト勉強したかったんだよなぁ。)


一人の女性が、近づいてくる。周りの人間が自分の席に戻る。

「かっこわる。」

女性はひとこと俺に告げて、自分の席に帰っていった。


目の前が真っ白になり舞台が切り替わる。

どうやら木の下にいるらしい。


「好きです。付き合ってください。」

顔を真っ赤にした、可愛い女の子が頭を下げる。


「ごめんなさい。誰とも付き合う気は無いんだ。」

(あー。もったいねぇ。本当にこいつ俺の記憶か?そこはバシッと付き合っちまえよ。)

女の子は、涙目になってその場を去った。




「もったいないわね、あの子モテるのよ。」

後ろから声が聞こえる。振り向くとそこには、女性がいた。

「うっせぇー、俺が誰かと付き合ったら他の女が泣いちまうだろ。」


フッ

女性が鼻で笑う

「その自信はどこから来てるのかしら。自分がモテてるとでも思ってるのかな、可哀想な人。」



「実際に、モテてるだろ?それにお前。覗き見なんて趣味わりぃーぞ。」

俺はめんどくさそうに答える。


「違うわよ!たまたま通りかかっただけよ!あんたなんかこれっぽっちも興味なんか無いわよ。」


(おー。こわこわ。)


「それとさっきのかっこわるってなんだよ。」

俺は尋ねる。


「あんたが薄っぺらいからよ。みんなの意見に流されて、聞き心地のよい言葉だけ使って腹が立つ。」


「見なきゃいいのに....」


「うっさい!うっさい!だまれ!」


パチンッ

頬に痛みを感じる。思いっきり頬を叩かれたらしい。


そしてまた、舞台が変わる。

水の中のようだ。魚に戻っている。


(薄っぺらいか。妙にしっくり来る。

いつからだろう。物事を深く考えなくなったのは、流された方が楽って思ったのは、)



俺は転生してから、女神に与えられた能力で俺tueeeや、ハーレムを目指そうとした。何も努力せずに手に入れた力に価値はあるのだろうか?例えば、いきなり最強になったとして、そこに達成感はあるのだろうか?必死に生きた証を残せるのだろうか?


たぶん何も残さない。与えられた力だから。

自分で手に入れた力じゃないから誇れない。

生きてるだけじゃダメだ。

誇れるものが欲しい。生きた証が欲しい。何かを命懸けで達成したい。それが俺の生きた証になるから。





(海の支配者....目指してみるか。)


雪音が言っていた。空の支配者があるなら海の支配者だってあるはずだ。

海の支配者になるには生半可な覚悟だとすぐ死ぬだろう。覚悟があっても運が悪ければ死ぬだろう。でも成し遂げれば、誰よりも強く生きた証になる。


「いずれは海の支配者になる者 サメ三郎」ってな

(雪音、笑うかな?)


俺は、水の中を真っ直ぐに泳ぐ。

奥には、もう一人の俺(サメ)がいた。


「来るのがおせぇーよ。待ちくたびれたわ」

もう一人の俺がニヤリと笑う




〜〜〜〜〜〜〜〜〜

作者レポート


書くの楽しい。

色んな人に読んでもらえてるのは

嬉しい半面恥ずかしい。(.;゚;:益:;゚;.)

たこ焼きのタコなし食べました。

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