ハヤマ・ロイド社の動向 2

 社長室の椅子に身体をあずけると、すぐに電話の電子音が鳴った。受話器を上げ、面倒なのでスピーカーのボタンを押す。

「私だが」

「七峰です。直接参ることができずに申し訳ありません」

「どうだった」

 やや間があり、それから彼は喋った。「見つかりませんでした。ほとんどまわったつもりなのですが……。もしかしたら新宿区から出たのかもしれません」

 かかか、と笑う。「いるよ。奴はいる。しっかりと新宿にね」

「――はい? ご存知なのですか?」

「なあに、ただの勘さ」

 訝しげな、はあ、という声があった。

「まあいい。とりあえず、きょうは引き上げて休みたまえ」

「ですが……」

「休めといっているんだ。そうしたまえ」

 彼はまた、はあ、といった。

「私はすこし考えることがある。もう切るぞ」

 ブツという音。それから椅子を反転させて窓から空を見た。

 ――まずは逃げ切ったか。さあて、一晩いただいたからには、決断しなければね。

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