03.守りたい

卒業式に見た尚の姿を最後に、友達という関係性から変われないまま数年の月日が流れた。



それなりに僕も女性と付き合うことはあったが、長続きはしなかった。

心の隅に追いやった尚への想いが、僕の中で消えることなく今でも小さく息をしていた。






 そんな中、仕事で尚に再会したのは偶然の出来事で、驚きのあまり気の利いた言葉もかけれなかった。







 ある日、仕事でミスが続いていた尚をご飯に誘った、その帰り道。

 ぎこちなくはにかむ笑顔から、少しずつ涙が溢れ落ちる尚の瞳には僕じゃない男の影。僕は尚の瞳に映ってはいない。




 それでもこの時、僕の目の前で涙を流す尚を見て心の底から思った。








 君を守りたいと。









 その日、僕は初めて尚の震える肩を包み込むように抱きしめた。

 尚は僕の背中に手を回さずに、声を殺して泣く。




 口から出かけた好きの2文字を僕はこの日も尚に伝えることはできなかった。

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