自習
担当の先生が不在の為、黒板に自習と書かれている。モーラと笑いながら動画を視聴していると、スマートフォンから着信が届いた。その名前を見て、げっ、と表情が引きつく。速やかに廊下に出て、いつまでも切れない着信に応答する。
「もぉー?」
『遅いでーす! 傷つきましたー! おチビちゃんが原因でメンタルやられたので病みまーす!』
「無茶言わなんくんさいよ。今授業中っすよ?」
『おやぁ? そうなのー? ふーん。楽しそうに動画を見ているその時間が授業中なんだー?』
「げえっ! 見てんの!? どっこよ!?」
『今日アルバイト無いでしょう? 私も早めに仕事が終わるの。なので、可愛い身内の特訓に付き合ってあげようと思いましてね!』
「いんや、いいよ。折角早上がりできんから、休めばいいんす」
『待ち合わせはセルバンテス中央店でいいよね!?』
「話聞いとっと!?」
『おチビちゃん、闇魔法使いになるのであれば、私に聞くのが一番だよぉー?』
「いい、いい。じゅじゅといたら気落ちてくんもん。ただでさえ、おめ、闇魔法の狂気放てんべ。気狂ったら魔法使いさなれんくなるってんが」
『ちょっとくらいなら大丈夫! 大丈夫!』
「いいって。しつこいがなぁ」
『なんでそんなこと言うの!? 私が寂しいってなんでわかってくれないの!!??』
「んな、したら好きな人んとこ行きゃいいべさ」
『なんかねー、間抜けちゃんったら、ずーーっと別れないんだぁー。そろそろ別れてくれると思うんだけどねー、でもまだ別れる気配がないんだよねー。だからとりあえずおチビちゃん、とりあえず今日ね、今日、うひひ! 一緒に魔法のお勉強しましょーね! 晩御飯奢るからぁ!!』
「……あー、晩飯ついてくんか……。それなら……ん……、まあ……ちー、くらいなら……」
『え!? まじ!? 全然そんなの奢る、奢る! わーい! これで今夜の話し相手ができたー! あーは! 何食べたーい!?』
「えー、ラーとか? じゅじゅ何食べ?」
『えー!? 私ー!? んーー! 何でもいいー!』
「何でもいいが一番困んべ……。あ、したら、ほれ、あた、すきや、食べとー」
『オ・ララ! 良いじゃなーい! じゃー、魔法の練習いっぱいして……すき焼き行っちゃうー? じゅじゅ、おチビちゃんのためなら、いくらでも連れてってあげちゃうー!』
「(ゲームしようと思ってたのに……)んだ、したらそわけで」
『アップ・リ・タード!!』
着信を切ると、首根っこを掴まれた。
「ふぎゃっ!」
「これ、ミルフィー、何やってんだい」
「ああ! 先生! すんません! 身内から連絡が入りんして!」
「授業中じゃないのかい?」
「今日は先生が不在なので自習なんす」
「ふん。どうせ皆遊んでんだろう。全く……」
先生が教室のドアを開けた途端、教室に沈黙が訪れた。皆が思った。嫌な予感がする。先生がにやりとする。
「自習だって? いいねえ。自習で磨き上げた魔法の成果を見せてもらおうじゃないかい」
「「げっ!!」」
「先生! ごめんなさい!」
「ご勘弁を!!」
「だからお前らいつまで経っても落ちこぼれなんだよ! ミルフィー! 教室戻りな!」
(じゅじゅの馬鹿……)
あたしはスマホを睨んでから教室に戻った。
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