授業中4

 今日も厳しくも自分の為になる授業の最中、ふと、あたしの鉛筆を見た先生がこんなことを言った。


「ミルフィー、質問だよ。お前、鉛筆はどうやって削ってる?」

「……。え、鉛筆んすか?(この人何言ってんだ?)鉛筆は、鉛筆削りで……削ってます」

「ふむ。そうだよね。普通はそうだと思うよ。そうだね。テオ、お前は?」

「鉛筆削りです」

「マット」

「鉛筆、使わないので……でも、昔は鉛筆削りを使ってました」

「ああ。そうだと思うよ。その方が時間も早いと思うよ。昨日の話だよ。家に帰ったらね、しゃりしゃり音が聞こえるんだよ。何の音だと思ってね、リビングを覗いてみたら、新聞紙をテーブルに敷いて、カッターでものすごく綺麗に鉛筆を削る馬鹿弟子がいたんだよ」

「先生、お弟子さんとまた何かあったんですか?」

「いいかい。お前達。鉛筆を自分で削ってる暇があったら、魔法を磨く時間に費やしな。いいね。私達は常に魔法と向き合う専門職だからね。ゲームで魔法を磨く暇がないっていう奴がいたらやめちまいな」

(これはお弟子さん、また何か言ったんだな)

「なんか知らないけどね、ストレスの解消方法を探している時に見つけたんだとさ。あれのどこがストレス解消なんだい? 芯が小さくなった鉛筆をわざわざカッターでこまかーーーーく切って。一本で一時間もかかってた」

「「一時間」」

「もちろん一本だけなら私だって良かったねで済んだよ。でもね、隣の筆箱を見てみたら、あと五本も残っててね。五時間やるつもりなのかいって聞いたんだよ。そしたらあの馬鹿、なんて答えたと思う? ダン」

「えーと……五本じゃなくて、十本ありましたーとか?」

「いいとこ行ってるね。正解は、『眠いからもう寝ます』」

「「眠いからもう寝ます」」

「強者すぎぃ!」

「しかもその日、魔法の課題を残しててね。眠くなるまで何やってんだいって私も怒っちまって、鉛筆削りで言い争いだよ。ストレス解消して、すっきりして、それで課題を続行して終わらせるならまだわかる。だがね、あいつはもうわかんないから明日やりますってそう言ったもんだから、課題終わらすまで眠らせなかったよ」

((鬼すぎる))

「え、でも、終わらせたんですか?」

「ああ。目の前でやらせた。今日の三時までかかってたね」

(ん?)

「先生、先生はその間何やってたんですか?」

「答えようじゃないか。ネビット。あいつが寝ないように監視を兼ねて、課題のヒントを与えてたんだよ」

「つまり、お弟子さんの課題に先生も付き合ってたんですか?」

「馬鹿な弟子を放っておいたらいつまで経ってもやらないからね」


 その瞬間、クラスの全員が同じことを考えた。


((やっぱりお弟子さんのこと大好きなんだなぁ))

(愛されてるなぁ。お弟子さん)

(まじでどんな人なんだろう。お弟子さん)

「ああ、それで思い出したよ。課題が終わった後十分くらい使って弟子が削った鉛筆で描いた絵があるんだよ」


 先生が空中に手を沿うと、そこから紙が出てきて、あたし達に向けて見せた。そして、あたし達は目を丸くする。


「「何この芸術作品!!」」

「これ、お弟子さん描いたんですか!?」

「十分で!?」

「すげー!」

「ミランダ先生だ!」

「しかもめっちゃ美しい!」

「こういうところは器用なんだけどね、あの馬鹿」


 馬鹿と言いつつ、先生は優しい目で絵を眺めて黙り込み、しばらく授業が再開されなかった。


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