お師匠様、愛してください

 最終章後の設定になります。

 色々ワケあることは察してください。

 ミランダ眼帯してます。ルーチェ(20)休学中。

 ――――――――――――――――――












 ミランダ様との関係に恋人が追加された時、あたしは幸せすぎて未来が怖くなった。本気でミランダ様に嫌われる日が訪れるかもしれない。ミランダ様に嫌われたくない。三日間、ミランダ様とまともに話すことが出来なかった。あたし、何でもないですよ。何も考えてないですよっていうふりをするので精一杯だった。でもあたしの脳は単純で、三日間もまともにミランダ様と話すことが出来なければ、心に寂しさが訪れてしまった。ミランダ様がソファーで魔法書を読んでるのを見て、そそそ……と近付き、綺麗なお膝の上に顎を乗せて、構ってくれませんか、という目で見上げたら、ミランダ様は目をあたしには向けなかったけれど、優しい手を伸ばし、あたしの頭をなでてくださった。


 大好きです。ミランダ様。

 あなたと恋人になれて、ルーチェ・ストピドは何よりも幸せです。


(ミランダ様)


 貴女が伏せと言えば伏せましょう。貴女が待てと言えば待ちましょう。貴女がお座りと言えば座りましょう。


 ミランダ様、あたしのお師匠様。救世主様。永遠の主様。愛しい貴女様。


(あたし、生きてて良かった)

(幸せです。ミランダ様)


 けれど、ルーチェは眉をひそめた。


(恋人って、こんなもんなのかな)


 ミランダは仕事から帰ってくれば研究室に籠もっている。それは恋人になる前と変わらない日々の習慣だった。


(でも、せっかく恋人になったんだよ? ちょっとくらい、こう、イチャイチャしたくない?)


 ルーチェがYES枕を持って、ミランダに声をかけたことがあった。


「ミランダ様、今日……一緒に寝……」

「明日は朝早いんだよ。また今度ね」

「ああ……そうですよね……」


 最近、ルーチェは不満に思っていた。

 どうしたってミランダに軽くあしらわれている気がしたのだ。


(もっと、ミランダ様とイチャイチャしたい……)


 そりゃ、ミランダ様はあたしよりも年上で、大人で、そんなにイチャイチャしなくてもいいと思っているかもしれないけれど、あたしは二十歳になったばかりで、貴女と比べたらまだまだ若いんです。我儘言いたい生意気な年頃なんです。


 もっと愛されたい。

 もっと構ってもらいたい。

 もっともっと、頭をなでてほしい。


(どうしたもんかな)


 ルーチェがミランダの背中に抱きつきながら考える。


(どうしたもんかなー)


 ズルズルと引きずられる。


(もっと愛されるために、どうしたらいいかなー)


 ミランダがソファーに座った。ルーチェがミランダから手を離し、膝に頭を乗せた。セーレムが近付き、ルーチェの頭の上に乗って眠りについた。テレビでは動物が映っている。ミランダはそれを観察し、魔法に活かそうとしている。


 魔法、魔法、魔法のことばかり。けれど、そんな貴女がより魅力的に見えてしまう。魔法に没頭する貴女が愛おしくてたまらない。好きな魔法を研究して、それを仕事現場に持っていくんだと意気込む貴女が大好きでたまらない。やめてほしくないけれど、たまには構ってくれないと寂しい。


 ルーチェがスマートフォンで検索した。


『恋人に愛されるためには、まず自分から愛してあげましょう』


(……あー、確かに)


 一番の基礎ではないか。この基礎を忘れていた。


(確かにその通りかも!)


 ルーチェに戦慄が走る。人に愛される根本を見た気がした。自分が愛すればいずれと恋人はその愛に気付くことでしょう。まずは貴方から愛してあげてください。


(なるほど!)


 ルーチェがスマートフォンを消し、ミランダの腹に抱きついた。


「ミランダ様、あ、愛してます……」

「知ってる」


 頭を撫でられ、ルーチェははっとした。


 ――愛してるって言ったら、頭を撫でてもらえた!


(これが! 愛で返ってくるということ!?)


 なんてこった。こんな簡単なことだったなんて。ルーチェの目がメラメラ燃え始める。愛をあげたら愛が返ってくる。ならばもっと愛すれば、もっと頭を撫でてもらえるのではないだろうか。こんな考えは良くないか? でも、ほしいのだもの。ほしいのであれば自分から取りに行くしかない。ミランダ様もそう仰るはず!


(ミランダ様! あたし、貴女に愛されるために頑張ります!)

(……視線が痛い)


 ミランダがルーチェの頭をぽんぽんと軽く叩いた。



(*'ω'*)



 恋人に愛される方法1.料理上手になる。


「ミランダ様! 今日は! お手性ハンバーグです! チーズも乗せてみました!」

「サラダは無いのかい?」

「……。……。……忘れてました……」

「馬鹿だね。もう。栄養偏るよ」


 ミランダお手性のサラダがテーブルに並ぶ。しかも超うまい。


(ま、またミランダ様にご迷惑をかけてしまった……! 嫌われたくない!)


「あ、明日はもっと頑張ります!」

「ああ、頼むよ」

「はい!」


 ルーチェがハンバーグを食べた。あ、我ながら美味い。


(次!)


 恋人に愛される方法2.独立した女性になる。


(来年の査定テストで一発合格して魔法使いデビュー出来るように、鍛えておかなければ!)


「行くよ! セーレム!」

「行け! ルーチェ!」

「独立女性を目指して30分森を走ります!」

「頑張れ! ルーチェ! 魔法は体力!」

「魔法は体力! うわぁあああああ!!」


 ミランダが屋敷に帰ってくる。部屋の地面に下りると、いつものパタパタ近づく足音が聞こえない。


「……」


 ミランダがマントと帽子を脱ぎ、リビングに行くと、ソファーで伸びるルーチェとその上で丸くなるセーレムを見た。


「何やってんだい」

「ルーチェが独立した女を目指して森を走ったんだ。でも帰りに迷子になって五時間かかってようやく帰れた。疲れたよ。でも大冒険だった。世界が広いんだって、俺は改めて思ったね」

「こいつは?」

「ずっと寝てる」

「ご飯は?」

「ルーチェは寝てるよ。ずっとね」

「この役立たず」


 ミランダが軽くルーチェを叩くが、ルーチェはぐっすり眠っている。しばらくして目が覚めた頃には、ミランダの魔法によって作られた料理がテーブルに並んでいた。青い顔になったルーチェが即座に土下座する。


「も、も、申し訳ございません! ミランダ様!」

「頼むよ。全く」

「申し訳ございません!!」

「ルーチェ、俺もお腹空いたー」


(畜生! ごめんなさい! 次!)


 恋人に愛される方法3.いつだって恋人の味方でいる。


「ミランダ様、あたしはどんな時だってミランダ様の味方です。いつだって頼ってください」

「今日一日寝てたお前に何を頼れってんだい」

「はぐっ!!」


 ルーチェが完全にノックダウンされる。試合終了のベルの音が聞こえた気がした。


(ああ……駄目だ……。まじで学校に通ってないと何も出来なくなる……)


 改めて自分の手を見つめる。そこには、何もない手が残されている。去年までは杖を握り、土を握り、皮が破れて、ぼろぼろな手だった。


 今は、とても綺麗な手だ。


「……」

「……ルーチェ、着替えの手伝いをしてくれるかい?」

「え? あ、はい。着替え、ですか?」

「少し目が痛くてね」

「……目が……?」


 その言葉を聞いた瞬間、ルーチェが顔色を変え、すぐにミランダの膝に手を置き、地面に膝をつく。


「み、み、ミランダ様、お医者さ、おい、お医者様を、呼びましょうか?」

「大丈夫だよ」

「お薬は?」

「飲んだ」

「痛みは」

「大丈夫だから、……一緒に部屋に来てくれるね?」

「お、お、お着替えですね」

「ルーチェ、……ただの着替えだよ」

「ええ。わかってます。着替え、はい、えっと」

「ほら、退きなさい」

「あ、す、すいません」


 ルーチェが退けばミランダが立ち上がり、寝室に向かってのんびりと歩き出す。その後ろをルーチェが忙しなさそうにそわそわしながらついていく。


 ミランダが指を鳴らした。薄暗いライトが付き、ベッドに座る。ルーチェがクローゼットを開けた。ミランダが着てる寝間着を選んで腕にかけ、ミランダの側に寄る。


「ミランダ様、脱げますか?」

「なんだい? 脱がしてくれるのかい?」

「貴女が望むなら」


 ミランダがきょとんとルーチェを見て、真剣な瞳を見て、鼻で笑う。


「目なら大丈夫だよ」

「ですが」

「ルーチェ」

「……あ、あ、貴女は、無理ばかりされるじゃないですか」


 再びルーチェが地面に膝をつき、ミランダの手を取った。


「我慢は毒です。あたしで良ければ力になります。お願いです。無理はしないでください」

「……馬鹿だね。ほんの冗談じゃないかい」


 ミランダがそっとルーチェの頬に触れる。


「痛くないから心配ないよ。本当に痛かったらちゃんとお前に言うから、その時は頼むよ」

「……でも、でも、あのっ……」

「ルーチェ」

「でも……」

「……お前のせいじゃないんだから、いつまでもくよくよしてるんじゃないよ」

「……」

「痛くないよ。冗談だからね」

「……はい……」

「はあ。……確かに最近忙しくてあまり話をしてなかったね。おいで。恋人として話そうじゃないのさ」

「こっ」


 ルーチェが顔を赤らめて黙った。ミランダはのんびりとベッドを叩く。


「ルーチェ」

「……はい。ミランダ様」


 ゆっくりと隣に座ってからミランダの手を両手で握りしめ、ミランダだけを見つめる。そんなルーチェにミランダは軽く笑った。


「そんな目で見てくるんじゃないよ」

「……すみません。ほんと、本当に、痛くありませんか?」

「何なら触ってみるかい?」

「……アルコールペーパーありますか?」

「大丈夫だよ。ぺって触るくらい」

「ちゃんと消毒してからにします。でないと、ミランダ様が汚れてしまいます」

「言ってくれるじゃないのさ。私が何に汚れるって?」

「あたしの垢がついて、ミランダ様が汚れます。それはか、か、回避したいです」

「お前の垢なんて大したことないよ」

「……眼帯も取りましょうか。もう寝る時間ですから」

「……そうだね」

「外しますね」


 ルーチェがミランダの眼帯を外した。そしてはっきり見えるようになった傷を見つめ、ゆっくりとルーチェが唇を寄せた。――どうか、痛くなりませんように。祈りと願いを込めれば、ミランダの指がピクリと動き、ルーチェが離れる。


「着替え、どうしますか?」

「お前が選んでくれたのだから、着替えようかね」

「手伝います」


 ミランダがバスローブを脱げば、何とも言えぬ美しい体が出てくる。ルーチェが下着を渡し、ミランダが着ていき、ナイトガウンに着替える。服装が違うだけでまた雰囲気が変化する。ルーチェの心臓が高鳴る。着替えさせてる時も緊張していたが、今もかなり緊張する。ミランダが近い。ルーチェの手がミランダから離れた。ミランダが振り向いた。目が合う。ミランダが近付いた気がした。違う。近付いてる。


(あ)


 唇が触れ合う。


「……ミランダ様……」

「お前くらいだよ。こんな傷がついた顔を見て、うっとりする奴なんて」

「だって、ミランダ様は……どんなお姿でも美しいです。何度も言ってますけど……今のミランダ様のお顔も好きなんです。とても魅力的で」

「ああ。お前の視線を痛いくらい感じたよ。着替えてる時に悪戯されると思ったんだがね、何もしてこなくて残念だった」

「そ、そんな失礼なこと、あたししません! ミランダ様の、す、す、すー、崇高なる着替えを邪魔するなんて!」

「随分と従順じゃないかい。いつもは暴れているくせに」

「そ、そんなことありませ……んっ」


 再び唇が触れ合う。


(……わあ……駄目……)


 ルーチェが瞼を閉じた。


(とろけてしまう……)


 唇が離れ、くっつき、舌が絡み合う。


(ミランダ様……)


「……あっ……」


 ベッドに押し倒される。上にはミランダがいて、自分を見下ろしている。その姿も美しい。ルーチェの視線がミランダから離れられない。


「……ミランダ様……」

「ん?」

「あたし、今、とてもお、おこがましいことを、か、か、考えて、ます」

「へえ。どんなことだい?」

「……今、着換えられたばかりで何なのですが……この後、もしかしたら……ひょっとすると……その……その……、……貴女と交われるんじゃないかと……」


 ルーチェが息を呑んだ。ミランダがルーチェの首筋にキスを落としていた。緊張で体が強張り、胸の鼓動はとても早くなる。


「貴女から、愛を与えてい、い、ただけるんじゃ、ないかって……」

「そうだとしたら、お前どうするんだい?」

「……そ、それ以上の愛を、貴女に捧げます」

「捧げる、ね」

「捧げます」

「与えるんじゃなくて?」

「捧げます」

「お前は変わらないね」


 ミランダがルーチェに唇を寄せるたびに、ルーチェの体がぴくぴくと震え、熱い吐息を吐いていく。ミランダが耳元で囁いた。


「力抜きな」

「す、すいません。いつも、なんか、忘れちゃって……」

「慣れないねぇ」

「だ、脱力って、どうしたらいい、いいんでしたっけ……」

「教えてやるからこっち向きなさい」

「あっ……」


 唇が塞がれば二人だけの時間が始まる。闇夜が二人を隠し、影は一つとなる。吐息の音が響き、水滴の音が響き、やがてルーチェの乱れた声が響く。布が擦れる音も、荒々しい呼吸の音も、ミランダが息を吐く音も、ルーチェが息を震わす音も、闇の中で響き渡り、愛が部屋中に漂う。


「……っ、ミランダ様……」

「……力、抜きなって」

「好きです……」


 抱きしめながらきちんと伝える。


「愛してます……。ミランダ様……」

「……私も愛してるよ。ルーチェ」

「あっ……あぁ……そこは……あっ……!」


 闇が深くなっていく。



(*'ω'*)




 ――ルーチェが目を覚ました。


(……はあ……)


 いつもの睡眠障害だ。脳が体内時計をおかしくしてる。目が醒めてしまった。


(ミランダ様……)


 振り返れば、ミランダがルーチェに背中を向けて寝ている。それをそそそ、と近づき、後ろから抱きつく。


(はあ……ミランダ様の匂いがする……)


 思わずふにゃりと頬が緩む。


(あんなに愛されたいって思ってたのに……)


 一晩で何十年分の愛を貰った気分。


(はあ……好き……好き……ミランダ様……好き……)

「……うーん……」

(愛してます。愛してます。愛してます)

「……はあ……。……ん……?」

(ちゅう。ちゅう。ちゅう)

「これ」

「ひゃっ!」

「人が寝てる時にうなじにキスするんじゃないよ」

「……起きてたんですか?」

「今起きた。ふわああ……」


 ミランダが寝返りを打てば、ルーチェと目が合う。


「昼からバイトじゃないのかい?」

「なんか、目が醒めちゃいました……」

「……お前は本当に体内時計がおかしくなりやすいね」

「体は疲れてるんですけどね……(いつもの睡眠薬飲もうかな)」

「さっきは気絶するみたいに寝たくせに」

「っ」

「ピロートークが無くて寂しかったよ」

「……。……。それは……」

「ん?」

「……何でもないです」

「何でもない割には何か言いたげだね」

「……何でもないです」

「ルーチェ、何でも言えない恋人はすぐに別れるって知ってるかい?」

「……だって……」

「だって?」

「……ミランダ様が、……きゅ、急に、その、はげ、その、は、……激しく……なさるから……」

「若いといいね。あんなに元気に喘げるんだから」

「あ、あ、喘げるとか、言わないでください! す、好きで喘いでるわけじゃないです! ミランダ様が中でかき乱したりするからです!」

「それで何回もイッてたのは誰だい?」

「……あたしです……!」

「気持ち良かった?」

「……それは……はい、もう……」

「私も気持ち良かったよ」


 ミランダがルーチェの頬にキスをすれば、ルーチェがうっとりとミランダを見つめ始める。今夜も視線が痛い。


「ほら、もう寝なさい。」

「……ミランダ様」

「ん?」

「あたし、思ってたんです。その、どうしたら、その……ミランダ様に、も、……、……もっと、愛されるかなって」

「なんだい。足りないってのかい?」

「ちが、その、……最近、お忙しそうだったので……」

「そいつは悪いね。でも魔法の研究は私にとって遊びの時間みたいなもんだからね。お前が小説書きたくなるのと一緒さ」

「ええ。わかってます。それに、あたしは……魔法をとことん追求する貴女が好きなので……」

「……」

「だけど、やっぱり構ってもらえないと寂しいもので……つい、そんな我儘を思ってしまいました」

「……そうかい」

「……これで、別れにくくなりますか?」

「ああ。お前もすっきりしただろう?」

「……そうですね。すっきりしました。でも、すっきりよりも、……ミランダ様から愛してもらえたことが、何よりも嬉しいです」


 ルーチェが満面の笑顔を浮かべる。


「愛してます。ミランダ様」


 そんなルーチェを見つめ、ミランダがゆっくりと手を伸ばし、ルーチェの頬に触れた。


「……ミランダ様?」

「……。もう一回するかい?」

「っっっっ!!!!!?????」


 にやりとして言う魔女に、ルーチェの口がわなわなと震え、顔を真っ赤に燃やした。


「よ、よ、よ、夜も遅いので!」

「ああ、そうかい。そいつは残念だね。さっきよりも激しく出来る自信があったのに」

「あ、あ、あれ以上やったら、あたし、死んじゃいます!」

「あの程度で死にやしないよ」

「も、もう寝ます!」


 ルーチェが顔を隠すようにミランダの膨らんだ胸に顔を埋めた。


「お、お休みなさい! ミランダ様!」

「……ああ。お休み」


 ミランダの唇がルーチェの頭に降った。


「愛してるよ。ルーチェ」

「……あ、たしも……愛してます……」


 心臓が激しい。けれど、目の前には愛しい人。離れたくない。この心臓の速さも心地いい。いつまでもこうしていたくなる。落ち着いてくる。力がだんだん抜けていく。ふと、ミランダの手が動いた。ルーチェの背中に手をとん、と当てた。ルーチェが驚いて目を開ける。また、とん、と手を当てた。だんだん、ゆっくりと、リズミカルになってくる。とん、とん、と手が当てられたら、その感触が心地好くて、ルーチェに眠気がやってきた。とん、とん、とミランダの手がルーチェの背中に当たる。ゆっくり息を吐いた。息を吸った。そこから、ルーチェの意識がなくなった。深い夢の中へ入ってしまった。ミランダが見下ろす。ルーチェは眠ったようだ。ふっと笑い、囁く。


「馬鹿だね。愛されたいなんて。こんなに愛してるのに」


 ルーチェの頭に再びキスを落とす。


「お休み。ルーチェ」


 ミランダも愛しい人の体温を感じながら瞼を閉じた。


 窓の隙間から星の光が漏れる。暗い部屋の中で、魔法使いとその弟子が、抱きしめ合って眠る。


 どちらとも、非常に穏やかな寝顔であった。





 お師匠様、愛してください END

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