31 Pa「 」eT
【タイトル】
Pa「 」eT
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892004148
【作者】
西木 草成 様
【ジャンル】
異世界ファンタジー
【あらすじ】
今道四季流剣術の使い手・今一色翔は、何の前触れもなく突如として異世界に転移した。目の前に広がるのはまるで夢を見ているかのようなファンタジーの――剣と魔法の世界。ゲームもチートも魔法も使えない状態で、翔の手元にあるのは捨てても何故か手元に戻ってくる奇妙な剣のみ。無一文で明日も知れぬ翔はどうにかイニティウムの街に辿り着き、ギルドの受付嬢リーフェの助けを受ける。三食作ることと引き換えにリーフェの家に居候することになった翔は、冒険者として生きていくためにギルドの世界へと足を踏み入れていく。
※第20話 剣の色 まで読んだ時点での感想です※
【魅力】
静と動を併せ持つ翔の剣術・戦闘シーンがクールです。剣と魔法の世界ではゴブリンを始めとするモンスター討伐などもクエストとして発生します。ド派手な魔法の炸裂も、大ぶりな武器による制圧も、それぞれにかっこよさのある戦闘ですが、剣術をおさめた、いわば武の心得のある翔の戦闘は研ぎ澄まされたかっこよさがあります。ゴブリンとの戦闘がそうですが、風流だとか型だとかを解さない、奇声をあげて無秩序に襲い掛かってくるゴブリンに対し、静かに呼吸を整え、無駄のない動きで技を決める翔の胆力はさすがのものです。本人は殺生に対して強い抵抗があり、現代日本で生きてきた人間の感性を持っているのも変に気取っているわけではなくて好感が持てます。翔と対峙するものの対比が印象的ですし、作中でも彼の「異質」である部分と「異彩」を放つ部分、いずれも表現された強さだなと感じます。
【気になった点】
重厚に丁寧に掘り下げていくのが今作の特徴のひとつであると思います。約9万字で主人公がパレットソードを手に入れ、冒険者としてのスタートラインに立つあたり、進行速度はどちらかといえばゆっくりと言えるでしょう。ジェットコースターのような展開や勢いで読者をひきつけるのではなく、物語としての作り込みや厚みで読者を獲得していくタイプの物語と推察いたしますが、そうなると「厚み」の部分にどれだけ読者が魅力を感じるか、になってくると思います。翔の異世界での日常を追っていく中で、どこに力をいれ、引き込む意図で構成しているか? 丁寧に描きすぎるあまり強みとしたい部分が埋没してしまう可能性もありますので、塩梅が難しいところではありますが、描き方としてはそのあたりが気になりました。
【その他】
リーフェさんには安定したヒロイン感がありますが、小動物的な可愛さをもつメルトさんが非常に刺さります。
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