17 ここに累々と

【タイトル】

 ここに累々と

 https://kakuyomu.jp/works/16816700429596669478


【作者】

  クニシマ 様


【ジャンル】

 現代ドラマ


【あらすじ】

 ある日の夕方、地方局の楽屋にて。芸人の木田は収録の待ち時間に置いてあった雑誌を適当に読んでいた。以前に受けたインタビュー記事が載っていて、「そんなこともあったっけか」となんとなく思い返す。壁掛け時計は十八時過ぎを指し示している。収録までまだしばらく余裕があるなと思いつつ、木田は座り心地の悪い椅子の上でひとり目を閉じた。


【魅力】

 あらすじにまとめさせていただいたものは小説の導入部に近いのですが、これだけ読んでもどんな小説なのか、よくわからないかと思います。ただ、あまり詳しく書いてしまうと、この小説の初見の魅力が大きく損なわれてしまいますので、ご容赦いただければと思います。

 4000字弱の小説なのですが、文字数以上の濃度を味わえる小説です。読了後、何度も読み返して、その余韻と意図するところを繰り返し問い直していました。私がこういった系統の小説が好きだ、と言ってしまえばそれまでなのですが、苦みを感じる、読者に「理解」することが求められる小説だと思います。理解するということは、当然ながら思考するということで、頭を使いますので流し読みをしたり情報をただ頭に入れるだけでは物語の全容を十分に把握することができません。今作に関して言うならば、物語冒頭から漂っているなんとなく不穏な空気を感じ取りつつ、ではその不穏の原因とは何なのか、その意図するところを文章から読み取る必要があります。それを理解したとき、物語の構成も加わって、震えにも似た感動が襲い掛かってくるのではないでしょうか。難解ではありますが、だからこそ一文の重みが異なります。

 難解だとか理解が必要だとか書いてしまいましたが、言うほど物語の構成は複雑ではありません。伏字にしますけれども何が×××で何が×××(記号数は文字数に必ずしも対応していません)なのかがわかってしまえば視界が一気に開ける小説なので。その「わかった」瞬間が個人的には最高潮でした。


【その他】

 小説ページのあらすじが「夢見る芸人の話です」の一文だけで非常にシンプルなのですが、読了後にその一文の重みを噛み締めています。

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