18 我が愛しの化け物へ

【タイトル】

 我が愛しの化け物へ

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887663025


【作者】

  砂原樹 様


【ジャンル】

 異世界ファンタジー


【あらすじ】

 森の奥深くにある古城には魔女が住んでいる。そんな噂が囁かれる森で道に迷ってしまった盗人の少年アルテは、古城で無機質な少女と出会う。黒髪が印象的な少女は作り物めいており、感情をほとんど表に出さず自らを「魔女の所有物」だと答える。名前を持たない彼女にアルテはティアと名付け、友達になろうと気まぐれな交流を始めた。ティアは少しずつアルテに心を開いていくが、魔女の呪いと通り魔の噂が二人の関係性に影を落とす。


 ※【閑話】血濡れの肖像 まで読んだ時点での感想です。※


【魅力】

 ボーイ・ミーツ・ガールを丁寧に緻密に描いた物語だと思います。アルテとティア、二人の境遇はいずれも恵まれたものとは言えませんが、心に傷を持ち、過酷な環境に生きてきた二人の交流に焦点を当てて展開されていきます。そういった意味では、この小説はミニマムなものだとも言えます。人々が怯える魔女の存在も、街を脅かす通り魔の存在も、アルテとティアの関係性を描くための乱暴に言ってしまえばサポートでしかない。それはとても贅沢でありますが、だからこそ二人の物語をより深く、徹底して読み解くことができるのだと思います。個人的には非常に効果的に作用していると思います。

 ミニマムだ、と書きましたが、メインキャラクターである二人がいずれも社会的弱者であることも、狭く深く描くことに影響を与えていると思います。アルテはイースト区という貧しい層の人々が住まう地区の出身ですし、そこから出られる自由を得ても盗人としての生き方を忘れられない。対してティアは売り飛ばされて転々としてきた、奴隷も同然の過去があります。社会の暗部を知っている二人だから互いの傷を理解できる……かと思いきや、二人が対比となっていることも面白いです。アルテとティアの会話を読んでいるとわかるのですが、考え方やスタンスが結構違うので、共感できる部分とそうでない部分がある。周囲の環境や人間関係も作用していますが、アルテがああいう信条だからこそ、ボーイ・ミーツ・ガールの物語として動いたのかな、とも考えます。一本筋が通っており、その筋が非常にわかりやすい。そういった意味でも読みやすく没入感がありどんどん引き込まれてしまいます。


【その他】

 名も知らぬ魔女さんの暗躍が第二部以降もあるのか、個人的には気になります。謎の多いひとなので。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る