11 死体になれなかった少年少女たち


【タイトル】

 死体になれなかった少年少女たち

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896797963


【作者】

 koumoto 様


【ジャンル】

 現代ドラマ


【あらすじ】

 死に触れて、死に揺れる。こころが死に触れるとき、人はあらゆる苦悩、葛藤、希望、絶望……羅列しきれない感情を宿す。そんな少年少女たちを描いた短編集。


【魅力】

 相当覚悟を決めて読まないといけないなと、タイトルを拝見した時点で思いました(他の小説を適当に読むとかそういう意味ではないです。念のため)。読書にあたってのカロリー消費というかメンタルの準備というか、ライトかヘビーかとか、作風はそれぞれあると思います。そういう意味で、この小説が漂わせている雰囲気はどう考えても重く、読了後に強い余韻を残し、引きずるタイプのものです。そして読了後、全くその通りであったと綴ります。


「死体になれなかった」というのが本作のキモだと思います。それぞれの短編の語り手は様々な境遇から死について触れ、考えるわけですが、登場人物の抱える背景や事情は相当に重く、読んでいくだけでもつらいものが多いです。死というテーマがテーマですから当然とも言えますが。ただ、死=救済だとか死を選べばすべてが解決できるとか、そういう短絡的な結論に至るわけではなくて、目の前にある死を選べそうな地点に立っている人間の、ほんの少しのきっかけでどちらにでも傾いてしまいそうな深層心理の葛藤や不安定さを外から中から描いている。安直ではない重さを文章で浴びるような、そんな心地でした。

 死を渇望する人間、生きることを憎む人間、生きることに意味を感じない人間、様々な人間が物語にも現実にもいます。死生観について考えさせられた、というような説話じみたものではなく、ただ、少年少女たちが死に触れたこころ、その繊細さで刺し貫かれたような鋭さを覚えます。短編集であり一話完結の構成となってはいますが、それでも一話ずつ通して読んでいくことで終盤の話に一気に畳みかけられます。「死体たち」はまさしくこの短編集の総括と言える話ではないでしょうか。


【その他】

 一番印象的な話はミュージックです。これは個人的な趣味嗜好です、こういうギミックのある話が本当に好きなんです。

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