10 修学旅行で出逢った、君と…


【タイトル】

 修学旅行で出逢った、君と…

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888590698


【作者】

 もってぃ 様


【ジャンル】

 恋愛


【あらすじ】

 宮崎良樹は他人に対してそつなく、しかしどこか距離を置きながら日々を生きていた。そんな彼の転機は突然訪れる。京都への修学旅行、そのグループ行動中に、あることがきっかけで良樹はクラスメートとはぐれてしまう。次のバスを待とうかとしていたところ、同じように一人バス停に佇む女子高生がいることに気づく。同じ学校の制服を着ていた彼女、中里宏枝は、ある目的のために単独行動をしていた。放っておけなかった良樹は彼女の目的に付き添うため、京都の街をともに歩いていく。


【魅力】

 交錯、という言葉がひとつこの小説を表現する上でのポイントかなと思います。良樹視点と宏枝視点で描かれる二人の物語を追いかけていくことになりますが、二人の心情に焦点を当てた展開なので内面が読み取りやすく親切です。恋愛小説は人間ドラマ的な部分も内包していますので、そのキャラクターをどれほど理解し、魅力を感じ、何らかの感情を抱けるかが作品理解に大きな影響を与えると思っています。

 このお話はひとつの出会いを二人の人間が綴っていくのが肝だと考えます。読者は二人視点、二人のモノローグ含め読み進めていきます。良樹の抱える事情も、宏枝が葛藤する姿も、相手方より情報を与えられているから十分理解できるはずです。理解しているからこそ、後半のとある事実が明らかになったとき、強い衝撃を受けるのではないでしょうか。「これは二人の物語が交錯した物語なのだ」と、改めてここに記しておきます。


【気になった点】

 好みの問題となってしまい恐縮なのですが、せっかく修学旅行というイベントを通して、不慣れな土地を舞台にしているので、情景と心理描写がより密接にリンクすると物語により奥行きが出るのではないかと感じました。具体的には良樹と宏枝が思い出作りに各所を回るシーンです。情景描写がないわけではないのですが、せっかく「思い出作り」と言っているわけですし、他よりも克明に、ディープに、掘り下げて造形してもいいんじゃないかな、と感じました。全体的に淡々と進む文体ではありますが、ここは物語でも二人の関係性を構築する上で重要な場面ですので、もっと見ていたい、詳しく知りたいと思いました。

 ただ、最初に述べた通り好みの問題です。あえて情景描写をそぎ落とし、心理描写とモノローグ中心にしているという意図があるかもしれませんので、その時はこういう受け取り手がいた程度に捉えていただければ。


【その他】

 良樹と宏枝、お互いに凍っていた心が少しずつ融解して、年相応の表情が出てくる過程が美しいです。

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