4 【本編完結】主観的には普通な少女の、彼女にとっては日常的な日々の話

【タイトル】

 【本編完結】主観的には普通な少女の、彼女にとっては日常的な日々の話

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054935265669


【作者】

  めぐるわ 様


【ジャンル】

 異世界ファンタジー


 ※11-4 戦いのあとにすること まで読んだ時点での感想です。読了時点でのネタバレを含みます。※


【あらすじ】

 街でも評判の美少女・レンガ=アイセ。パン屋「猫のパン」で働きながら、学院に通う日々を過ごしている。毎日はたくさんの人々との交流から成り立つ――「猫のパン」で優しく見守ってくれる人たち、学院での友人、「研究会」のメンバー、それから冒険者ギルド「銀月」。普通だと信じているレンガの日常は、ありふれているようで、世間一般の普通とはずれている。


【魅力】

 作者様があらすじに記載している、「レンガというレンズを通して世界を覗いていただいて、レンズの個性も映る景色も、それぞれ面白いと思ってもらえたら」これが本作の特徴であり面白さであると感じました。


 明るく笑顔が似合う花の咲いたようなレンガの人間的魅力、そして周囲からいかに愛されているかは、彼女が綴る一日一日から確かに感じることができます。パン屋では看板娘として溺愛され、学院では侯爵家のご令嬢に一目置かれ、友人も多い。交友関係の広さや天真爛漫さが伝わってくる、充実してほのぼのとした日常です。

 それが伝わってくる一方で、彼女の綴る日々が決して「普通」ではないことも早々に理解が及びます。異世界ファンタジーである以上、私の知っている常識をもってどこまでを「普通」と解していいかはわかりませんが、少なくとも、学院帰りに飛び出てきた悪魔を瞬殺することを「普通」とは呼ばない気がします。どちらかと言えば「非日常」に分類されるそれが、レンガの中では当たり前のこととして語られている。その綴り方がまるで友達とお茶をしたような感覚で触れられているから、彼女のレンズがどのようなものか、逆説的に証明されているなと感じました。

 私がレンガというレンズを通して見ている世界は一見ほのぼのとしていますが、その撮影者の感性をそのまま鵜呑みにしてはいけない、という構造がある種とんでもない「ゆがみ」にも感じられて(作者様が「個性」と書かれている箇所ですね)、非常に興味深い作りだと思います。


【気になった点】

 読みやすそうでいてわかりにくい、というのが、序盤を読ませていただいた所感です。


 行間があき、レンガの一人称というのもあり、そんなに難解な語句を使っているわけでもないので、一文一文が非常に読みやすくなっていると思います。ただ、一話読み終わった後に「色んなことが起こっているけど、つまり、どういうことだったんだろう?」という疑問が残ってしまうことがあり、私は意味深な余韻というよりは消化不良な感覚が先行してしまった感じです。

 特に学院の「研究会」とのやり取りが個人的には理解が追い付かなかったです。「銀月」と接触し、サファイアとともに実際に大きなバトルを展開すれば、世界観や戦闘能力も理解しやすいですが、「研究会」での演習は学院や侯爵家、国家の成り立ちや宝具と初見でたくさん情報が出されている中での展開だったので、個人的には理解が追い付かなかったです。すべての用語をその場で解説してほしいという意味ではないのですが、中途半端にいろんな情報が開示されて、世界観もまだ十分につかみ切れていない中で「学院の状況を把握しきれていないのにバトル要素も追加されるの⁉」とびっくりしてしまったので、そのあたりはもう少し情報開示して読者が自分で補完すべき要素を減らしておいてもいいのかなと思いました。

 

【その他】

 直近で読んだエピソードというのもありますが、サファイア様が好きです。ミステリアスと陰と時折見せる少女らしさと、彼女の「呪い」も含めてまるっと可愛がりたくなる愛おしさです。

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