3 Noah〜天空都市ブルーローザへの旅立ち〜

【タイトル】

 Noah〜天空都市ブルーローザへの旅立ち〜

 https://kakuyomu.jp/works/16816700429251337232


【作者】

 奥森 蛍 様


【ジャンル】

 異世界ファンタジー


 ※7 伴侶の誓い まで読んだ時点での感想です※


【あらすじ】

 豊かでのどか、争いとは無縁の北の大国・セシルブリュネ。その王子である三兄弟……しっかり者だけど融通が利かない長男アーサー、軽薄だが弱者を憐れむ優しさを持つ次男エドアルド、本が大好きな泣き虫でちょっぴり甘えたの三男ウィーンは、喧嘩もするが基本的には仲良しだ。

 ゆくゆくは国を担うはずだった彼らのもとに突如現れたのは、自称「神の使い」ノア。ノアは告げる、「八年後、神は大洪水を起こし、人類は六人の人間を残して滅ぶ」と。そのうちの三人に選ばれた三兄弟は、残る三人である人生の伴侶を見出し、次代に生きるため天空都市ブルーローザへ来るようノアに命じられる。しかし、祖国の大好きな人々が滅ぶのを受け入れられない三人。滅びの運命に従うのではなく、神に世界の救済を願うために……三兄弟はノアの飛空艇に乗り込む。


【魅力】

 三兄弟が世界の救済のため、世界を旅するファンタジー。そう書くと王道の展開で、また三兄弟の年齢も若いので、低年齢層向けの冒険小説かな? と思って読み始めました。が、それはとんでもない勘違いだったと即座に思い直しました。

 大人にこそ読んでほしい物語だと思います。ハイティーンよりは、社会に出て酸いも甘いも知ったばかりの、二十代くらいの大人に突き刺さりそうなストーリー展開です。


 ノアの方舟はあまりに有名な逸話ですが、それをモチーフにした今作で突きつけられるのは人間の業です。人間の醜さ、汚さ、罪と罰といった濁りとも言えるかもしれません。まだ年若い、無垢と評される三兄弟にノアが次々と残酷な現実というものを見せつけていくので、彼らのメンタルがとにかく心配になります。豊かな国で育った、世界はとても美しいと信じてやまない箱入りの王子様たち。いくら「彼らならきっと乗り越えてくれる」と信じていても、あまりにシビアな展開に読んでいるこちらの胸も痛みます。

 夢や綺麗事を語ると、論破されたり皮肉を叩かれたりしてしまうのが、大人になって生きづらさを感じてしまう社会です。しかし、そんな濁りを内包する世界を目の当たりにしてもなお、真っ直ぐな三兄弟が己の心に従い、感情を爆発させながら前に進もうとする姿は、やはり物語の王道と言えるでしょう。


 ネタバレになるかもですが、とある町でノアに残酷な現実を叩きつけられた後、「それでも世界を救いたい」と言えたエドアルドは本当に優しくて強い子だなと思います。

 

【その他】

「慈愛」の称号を冠するのが泣き虫で争いごとが得意でないウィーンではなく、剽軽でムードメーカーなエドアルドなところがすごくいいと思います。

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