第39話 倒せギガント・モンスター!
何を急速消化すれば良いか分からないし、複数個ある聖属性の素材をとりあえず一つずつ使ってみよう。
ぎゅいーんって感じで、全身にチカラが巡るのを感じる。
同時に、白い炎のようなものが全身から漏れ出し始めた。
「ベル、そのホワイトオーラはなんだ?」
「がぶぅ?」
さぁ?
わかんないけど、急速消化したら身に纏えたので、強化系のエフェクトなんじゃないかな? 知らんけど。
「とりあえずパワーアップってコトでいいのよね、ベルちゃん?」
「がぶ」
うん。
「タイムリミットはあるのか?」
「がぶ」
ある。
私はスーズさん、マイフレンドのそれぞれからの問いにうなずく。
「タイムリミットがあるなら、それが消える前に動くとするか」
「そうですね。有効利用しないと勿体ないです」
言うなりクロンダイクは左へ、スーズさんは右へと駆けだした。
そして私は邪想超獣の正面に立つ。
白いオーラのおかげか、背中の痛みはかなり軽減されている。でも痛いもんは痛い。
正直、とっとと倒して治癒しないと、痛くてかなわない。我慢するにも限界ってモンがあるしね。
ともあれ、この白いオーラ。
消化吸収した素材を考えると、聖属性的なパワーを持っているはず。
これをもっとも効果的に相手にぶつけるには――
脳裏に過ぎるのは、前世における格闘ゲームの一番有名だろう必殺技。
あるいは、人気の少年マンガの超有名必殺技か。
ようするに、腰だめに手を揃えてチカラを溜めて、最後に正面に向けてぶっぱするアレよアレ。
そうして構えた私の脳裏に、いつものアレが駆けめぐる。
『
やるぜやるぜ!
私はテンションを上げながら、両手を合わせそこへ意識を集中する。
全身から立ち上る白いオーラのすべてがそこに集約されていくイメージ。
そうやって私がパワーチャージを始めるのに気づいたクロンダイクとスーズさんは、即座に私を守る方向へと動きを変えた。
臨機応変に即応できる二人、マジかっこいい!
「トリプル・クローバー! 行けッ!」
クロンダイクが三本のナイフを同時に投げる。
それは不自然な曲線軌道を描きながら、邪想超獣に突き刺さる。
だが、邪想超獣は気にした様子はない。
「ならッ、こいつでッ!!」
続けてクロンダイクは五本のナイフを取り出して構える。
「ファイブ・マインズッ!」
五本同時に投擲すると、邪想超獣にすべて突き刺さった。
すると、そのナイフ全てから光の線が生まれ、ナイフ同士を繋ぎ、五芒星にも似た魔法陣を展開。
そして、ナイフの一つに赤い光が灯る。
一秒経つごとに隣のナイフに、さらに隣に……と時間とともに光は増えていく。
全てに光が灯ると何かがおこるのかもしれないけど、邪想超獣は動きを止めることなく、前足を振り上げる。
だけど、邪想超獣と戦っているのはクロンダイクだけじゃない。
「
スーズさんが、邪想超獣の手前。何もない地面に向けてムチを振るう。
すると、ムチは地面の中に突き刺さる――というか水面に入っていくかのよう。
次の瞬間、邪想超獣の足下から無数のムチ飛び出した。
すごい! どんな原理のどんな技よッ!?
私が驚いているうちに、飛び出した無数のムチは邪想超獣に巻き付き、あるいは切り裂き、暴れ回る。
それに対してもがいているうちに、クロンダイクが作り出した五芒星の全てに灯がともった。
刹那――ナイフの全てが爆発する。
グラつく邪想超獣。
いくら再生する身体を持っているとはいえ、ゼロ距離で爆発が起こればグラつきもするらしい。
「本当は地面に設置する技だが、図体がビックサイズな相手にはこういう使い方もあるってなッ!」
カッコいいぜ、マイフレンド!
そしてそのタイミングで……
「がぁぶがぶがうッ!」
チャージ完了ッ!
「スーズ!」
「はいッ!」
クロンダイクとスーズさんは声を掛け合いそこを飛び退く。
二人が完全に離脱するのを確認してから、私は全身にチカラを込めた。
「がぶぅ……」
これが私の全力全開ッ!!
「……がぁぶがぁぁぁぁぁぁ――……ッ!!」
――
私が両手を前――というか、相手の本体がやや上にあるので斜め上が正しいかも――に両手を突き出すと、そこから白銀の竜を想わせるエネルギーの奔流が解き放たれる。
それは
食らいついた勢いのままエネルギーは上空へと真っ直ぐ伸び、霧散するまで跳び続ける。
さすがに太陽まで届くようなことはなさそうだ。
……まぁ方角的に太陽はないんだけど。
私の手から何も出なくなると、同時に纏っていたオーラも消える。同時にちょっと目眩が来たけど、がまんがまん。
そして、目の前には本体部分を四分の三は失った邪想超獣がフラフラと佇んでいた。
今なら――食えるか?
私は両手をあわせて、いつもの言葉を口にする。
「がぶがぶがぶ」
いただきます。
「フレンドッ!」
「ベルちゃん!」
クロンダイクとスーズさんがそれに気づき、失敗はさせぬとばかりに、武器を構える。
「私が残った足を切り落としますッ!」
「なら俺は、本体にもう一発ブチかまそうかッ!」
スーズさんが目にも留まらぬ早業で邪想超獣の足を切り落とす。
そして――
「ミリオン・エース……切り札の一つさッ!」
クロンダイクはルーマを込めたナイフを一つ空へと投げる。
直後――無数の雨のようにナイフが降り注ぐッ!!
……スーズさんの技といいお前の技といい、どういう原理だッ!?
ともあれクロンダイクはその降りしきるナイフの雨を縫うように駆け抜けて、膨大なルーマを纏う剣を構えて払い抜けたッ!
一瞬遅れて斬撃の光跡が走る。
そうして、残った本体部分がさらに半分に刻まれた。
カッコいいじゃないか、マイフレンドッ!
ここまでされたら、失敗できないよねッ!!
「が~~~~~~~ぶッ!!」
だから私は口を大きく明けて、邪想超獣へと飛びついた。
だけど――
「…………!!」
邪想超獣は、残った本体部分から一本の触手を生やす。
おいおいおいおいおいおいおいおいおい……!! ここへ来てこの悪足掻きかよ……ッ!
「フレンドッ!」
「ベルちゃんッ!?」
クッソ! 口を開けてダイブしちゃってるから、身動きが……!
「きゅわぁぁぁぁぁんッ!!」
焦る私より上から、犬の鳴き声が響く。
「ソリティアッ!?」
そう。マイフレンドのペットとなったソードウルフのソリティアちゃんがこちらへと飛びかかってきている。
ソリティアは自分のボディから生えている剣の柄を口で加えて、一気呵成に引き抜いた。
その引き抜く勢いのままに身体を回して触手を斬り飛ばすッ!
「ナイスだ、マイウルフッ!!」
飼い主に褒められてドヤ顔のソリティアはくるくる回転しながら落下していく。
それを着地まで見送ることはできないけれど、よくやったと心の中で褒めながら、改めて私は口を邪想超獣に向ける。
邪想超獣は新たに触手を生やそうとするものの、それの準備が終わるより、私が飲み込む方が早かった。
ぱくり。
口いっぱいに頬張ったまま、私は落下していく。
ごくん!
そして着地と同時に飲み込んだ。
その瞬間――
「がぶ?」
急激に目の前が真っ暗になっていく。
やばいやばいやばい!
美味しいとか不味いとか感じる前に、意識が遠のいていくッ!
クロンダイクやスーズさん、カルミッチェさんが駆け寄ってくるけど、三人が私のところにたどり着く前に、私の意識は完全に途切れてしまった。
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