かわいい惑星(3)_Kawaii Planet Part 3
「私たちはニホンについてよく知ろうとしましたが、実に奇妙な点に引っかかったのです。トウキョ(これは敢てそうしているのか、それともそのような発音だと流布しているのかわからない)とキョウト、その二つの都市が文字通りさかさまなのです。ジョークではありません、実にこれは大きな争点になったのです。文字通り、と申しますのも、ニホンが真逆の二つの文化を独立的に発展させ、二つの都市を構築しているのではないか、だから文字通りさかさまなのではないかという学説まであるのです。
「しかしいずれにせよ私たちは、失われた文化を求めて――トウキョの方へ似せようとしました。ですが、私たちにはネオンライトをつくるだけの技術がなかったのです。誤解しないでください、技術の模倣は技術の開発より容易です。私たちには、少なくとも模倣する技術がないわけではありません。一番の問題は、大気に含まれる希ガスの割合が、地球のものより遥かに低いことでした。大気を分析したところ、十億分の一ほどしかないのです。ネオンを得ることは、この星では自分にとって百パーセントの相手を見つけるくらいに困難なことなのです。
「ですから、サイバーパンクは断念しました。今考えれば、それは怪我の功名だったのでしょう、こうしてこの星は『かわいい惑星』に生まれ変わったのです」
まる一日私たちはその国を移動してはあらゆるものを見てきた。さて、この国の文化は一体どのようなものだったのだろう? 昔、文化は死んだという。しかしそれは違う気がした。きっとこの星の文化は、あらゆる文化を吸収する文化だったのだろう。文化は生まれ変わったのだ。
数か月後、ついに私は地球へ帰還することになった。「どうでしょう、私たちの技術力は? 地球のものを直すなんて、お茶の子さいさいですよ。よかったらまたここにお越しください」と、初めてこの星に着いたときに出会ったそれと呼んでいたものが言った。「いつでもお待ちしていますよ。……それと、あなたが私たちの惑星を観測した暁には、この惑星の住民としてそちらへもお邪魔するかもしれません。それではさようなら。お達者で」
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