誕生日
大学生の頃、その日は居候先の主の麻実の誕生日だった、成人する彼女には特別な物をと双子のノアと計画していた。
「あーあ、女性の欲しいものってなに?ネックレスとか重たいかな」
「お前らそういう関係だったのか」
「違うよ!ノアは何か考えているの?」
僕の問いかけにノアはポケットからスマホを取り出した
「ジョゼフ」
一言名を呼びすぐに切ってしまった、しばらく沈黙が流れる。
「ねぇジョゼフに何をお願いしたの?」
ノアは不意に窓を見て膝に肘を置き、その手のひらに顎を置いた。沈黙が辛いがいつもの事だった。
しばらくして窓の上から梯子が降りてきた、合鍵でも渡してやればいいのに、いつもいつもジョゼフの登場は可哀そうになる。
「坊ちゃんお待たせいたしました」
僕より身長は低く、全身皺だらけのお爺ちゃんが現れた、ジョゼフはノアの身の回りの掃除屋をメインに働いている。ジョゼフの腕にはピンク色の可愛らしいラッピングの箱が抱かれていた。
「なんだ!ノアはもう用意していたのか!」
「はい坊ちゃんがお困りのようでしたので私めがご用意いたしました」
「何にしたんだい?」
「僭越ながらこれを」
ジョゼフは照れ臭そうに丁重にラッピングされた箱を開けて体の前に掲げた
それは真っ赤なランジェリーだった
ノアは珍しく目を見開き、ジョゼフを見た。
「これは違うだろう」
「いえいえ坊ちゃん、パートナーにはこのぐらい積極的のほうが・・・」
「え!ノア麻実と付き合ってるの?」
「埋めるぞ」
ノアが喉仏を的確に突いてきた
「ジョゼフ至急別のものを用意しろ」
「坊ちゃんもまだまだですな、レディとはアピールに弱いもので・・・」
「麻実とはない」
「胴回りもわたくしと同じようで、ほらこの様に」
その瞬間ガチャリと玄関の音が聞こえる、真冬の冷気のようなものが一気に流れた。
「今日外回りでちょっと忘れ物持ったらすぐ・・・」
麻実の視線がランジェリー姿のジョゼフに注がれる、心なしかその視線は痛い。そしてすぐ僕らへ殺意のこもった睨みが向けられた。
「アンタ達ジョゼフに何してんのよ!ジジイ虐めて楽しいかごるぁ!」
玄関の傘立てに置かれた木刀を手に突進してきた。
アンハッピーバースデー
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