第3話
「じゃあ彼を、
「よさないか
三枝さんや四間さん、それに
「三枝さん。あんたじゃないのか? あの男を殺したのは」
五識さんに名指しでそう告げられた三枝さんは目を丸くする。
「な、なんで僕がそんなことをしなくちゃいけないんですか!」
「とぼけるな! 俺は知ってるんだからな。お前はあいつに、二階堂に借金があっただろうが。大方今日もあいつに追加で無心しようとしてお前はこの島を訪れた。だがあいつはそれを断った。だから殺した! 違うか!?」
五識さんは激昂して三枝さんを罵る。というか
「そんなこと言ってるけどさー、あんただってあいつを殺す動機はあるだろうが! あんたはその女との関係が二舘にバレて、そのことを妻子にバラすと脅されていただろうが! だからバラされる前に二舘を殺した。そうだろうが。この不倫野郎が!」
「ちょ、ちょっと! 三和人さん! 落ち着くザマス!」
「離せごらあああぁ!」
五識さんに掴みかかろうとする三枝さんを一さんと四間さんの二人がかりで抑え込む。何故か四間さんは急に金持ち語尾になっていた。ひょっとして向こうからちょっとPTA会長のキャラに寄せてきてくれたんだろうか。それに引き換え、三枝さん。この人はダメだ。自分の言葉に酔ってついカッとなるタイプの人だ。これじゃあ裏生徒会長は務まらない。しかも近づいて分かったけどかなりお酒臭い! もしかしたら五識さんが言ったように、アルコールの入った三枝さんは本当に二舘さんに借金を断られてついカッとなって殺してしまったんじゃないだろうか。
五識さんに掴みかかろうとする三枝さんを落ち着かせたあとで、私は気になったことを訊ねてみることにした。
「あの、四間さんは二舘さんとはなんの関係もなかったんでしょうか」
私の質問に四間さんは一瞬、瞳の奥に恥じらう乙女のような煌きを映した。四間さんは遠い目をしてポツリと洩らす。
「あの夜は……、あの夜は何もなかったのザマス……」
やってんなー。こいつも二舘とやってんのなー。どれだけあの男は節操がないんだ。危うく私もこの人たちとシスターズにされるところだったことを思うと、こう言ってはなんだけど早めに死んでくれて良かったとさえ思えてくる不思議。タイムリーランデブーしなくて本当に良かった。もうイケメンは全員私の敵だ。ゴッド イズ デッド。神は死んだのだ。しかし、こうなってくると一さんと私、それに
「一さんはもう犯人が誰だか分かっているんですよね?」
一さんは自分の顎を触りながら頷く。
「もちろん。僕は謎を解く以外は何もできない人間だからねー」
と、変わり者の名探偵のような台詞を恥ずかしげもなく口にする。一さんのこういうところは好きだ。もちろんそれ以外は嫌いだけど。
「残念ながら犯人は名乗り出そうにもないようですから、今から僕がその方を名指しさせていただこうと思います」
一さんの言葉にメンバー全員が息を飲むのが分かった。時が止まったように感じる。柱時計の秒針を刻む音だけが、この世界が歩みを止めていない証拠。それほどの静寂だった。一さんがゆらりと腕を水平に上げる。その指先が一人の人物を指し示そうとしている。
「犯人は――「やめろおおお!」」
突然部屋の隅で膝を抱えていた
「さ、
一さんが少し驚きながら訊ねる。一さんの呼びかけが聞こえなかったのか、
「普通ぱっと見と名前で俺が一番怪しいって分かるだろうがあああ!」
とブチ切れられた。もちろん一さん含めたこの場の全員が、だ。全員が
「はっ! ま、まさか……。嘘ですよね?
思わず私が呟くと、
そう言って
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