第2話 誰か俺の疲れを癒してくれ(2)
「いらっしゃいませ」
やけに、若くて明るい声がレジからしている。この時間帯は、なんともやる気のない男の店員がレジに立っているはずだった。
(それにしても、この明るい声は、仕事終わりの今の自分には苦行だ)
アイドルとかに興味がない俺にとって、キャピキャピした声に快感を受けない。むしろ、エネルギーを奪われる印象の方が強い。
レジ前の印に沿って並んだいると、前の人が空いたレジに向かって歩き出す。俺も一歩前に出て、そこから明るい声を出す店員……。というか声の正体を知った。
(なんだ? あれ)
店に入った時には気が付かなかった。
レジの前には若い女の子……ではなく、大きなパネルが立っていて、その中でアニメのキャラクターが映し出されていた。
「いらっしゃいませ〜」
順番が回ってきた男性は、どうしたらいいか分からない様子だ。
「初めまして、私、今日からここでレジを担当することになりました。
パネルの中のキャラクターがお辞儀をする。
「ここに、商品を置いてください。カゴがある方はカゴごと置いてくださいね」
男性は手にしている商品を言われた通りに、点滅している場所に置いた。
「お疲れなんですね。エナジードリンク、お好きなんですか?」
「えっ!?」
男性は驚いたように、パネルに写っているキャラクターに目を向ける。確かに、男性はエナジードリンクを買っている。
所定の場所に置いただけで、会計ができるシステムのようだ。なにを購入しているかも、もちろん分かるのだろう。
「レジ袋は必要ですか?」
「いいえ」
「合計で、890円になります。お支払い方法を選んでくださいね」
男性はスマホを操作して、QRコードを画面に向けた。支払いが完了した音が流れる。
「どうもありがとうございます。お体に気をつけてくださいね」
男性は「どうも」と言うように軽く頭を下げて、商品をカバンに入れると店を出た。
これが、俺が初めて見たAIレジだった。
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