AIレジ

宮澤 ハル

第1話 誰か俺の疲れを癒してくれ

 俺は秋月学あきづきまなぶ23歳の会社員。

 今日も社畜として働いた。もちろん残業ありだ。まだ月末でもないのに、残業の申請をすると、「今月の残業時間が30時間を超えています」と表示が出た。

 別に驚いたりしない。だからなんだというのか、なにも変わりはしない。


「は〜疲れた」


 もう。口癖になっているこの言葉。吐き出せば楽になるどころか、疲れを自覚して、さらに疲れを感じてしまった。


 電車に乗り込むと、すぐにスマホを取り出して、チャンネル登録してあるYouTubeをチェック。


(新しいの3件出てる)


 本要約チャンネルと仮想通貨や投資で成功している人のチャンネル。ゲーム中継も新しいものがアップされていた。


(そう言えば、政治家でゲーム中継していた人が、訴えられてたな……)


 ワイヤレスイヤホンで聴きたいチャンネルを選ぶ。

 いつか社畜生活を抜け出したいと心の奥底で沸々と思いながら、投資の話を聞く。最近、話題になっているFIRE。その言葉を知ってから、ぼんやりと自分もそうありたいと思っている。

 けれど、具体的に行動していることはまだない。


 駅を降りて、いつものコンビニに入る。コンビニで売っているものはスーパーより割高だが、疲れ切っている俺には、ここを素通りして、スーパーで食材を購入し自炊をする選択はない。


 コンビニのどこの棚に何が並んでいるかはもう暗記できるくらいだ。店の奥、冷蔵の棚からペットボトル飲料を手に取る。それから、おにぎりとパスタを選ぶ。トマトソースかカルボナーラか、はたまた和風醤油パスタか……。

 近くにサラダが並んでいるのをチラリと見るだけ見て、俺はいつもの炭水化物ばかりのメニューを手にしてレジへ向かった。


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