第13話
「あぁ。可愛いケンジさん。意識を失っても可愛いわ……さて、わたくしは十分満足致しましたわ。皆片付けとあとは段取り通りお願いね」
そう言うと第一王女は近くにあったローブを身に纏い風呂に行ってしまった。周りにいた騎士達は第一王女の命令通りに迅速に片付けと準備を行っていった。
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僕が意識を取り戻すと、そこは蝋燭が1本あるだけの真っ暗な牢屋だった。突然の状況の変化に驚いて声を出そうとしたが、思ったように声を出すことが出来ない。どうして!?パニックになってしまう。その時、突然声をかけられた。
「ようやく目が覚めたのね! おはよう、ケンジさん! 暗くて分かりにくいかしら、わたくしはミラーよ。先程は楽しかったわ〜」
「だ、第一王女……様……」
「可愛い可愛いケンジさん。この部屋は少々居心地が悪いかもしれないけれど我慢してね」
「毎日、朝と夜の決まった時間に暖かいご飯をこちらに持ってまいります。それと、夜のご飯の時に蝋燭も1本持ってまいりますね」
「可愛いケンジさん。そういうことだから、しばらくこの部屋に居てくださいね」
こうして、僕は牢屋に閉じ込められた。手錠や足枷はされていないが、壁や床、天井に鉄格子にまで魔術の結界のようなものが張られていて内側からはどうすることも出来そうにない。
牢屋の中には数枚の毛布と支給された蝋燭、トイレの代わりのバケツが置かれている。このバケツにも魔術が施されているようで、一定の量中身が溜まると自動で綺麗に無くなるのだ。同時に臭いも残らない。恐らくは、生活魔術の応用なのではないかと思う。
牢屋の中は想像していたより酷いものでは無かったが、環境に少し手が加えられていることで自分が管理されているのだと、より惨めに感じてしまう。
鉄格子の先も牢屋の中と同じく真っ暗で、騎士がご飯を持ってくる時以外は音もしない。どんどん時間の感覚が無くなっていく。
僕が牢屋に閉じ込められてからどれ程の時間がたっただろうか……もう時間の感覚は滅茶苦茶だ。騎士がご飯を持ってくるのが朝と夜と言われたが、最近では妙に朝が来るのが遅かったり、逆に夜のご飯が早くに来たりすることが多い気がする。
それに、少し前から蝋燭の在庫が無くなったとかで支給されなくなったのも時間の感覚が狂った原因の1つだと思う。
ようやく娼館の仕事から解放されたと思った。クラスメイト達からの虐めにも耐えた。娼館では気味の悪い薬を打たれての仕事もなんとか耐えてきた。
なのに、僕はまだ耐えなくてなならないのか。……何故だ、……何故僕なんだ。…………僕が弱いからか、力を持たないから虐げられるのか。
許せない。
僕を虐めるクラスメイトが憎い。
僕の事を笑った国王や騎士達が憎い。
僕の事を玩具にし闇に閉じ込めたミラーが憎い。
俺は必ず力を付けて、強くなって復讐してやる。
自分の中にそう誓いを立てた。
僕の牢屋という名の闇の中での生活は、実に何十年もの時間に感じられた。
しかし、誓いを立てたあの日から僕は変わったのだ。起きている時は僕の持っている“スキル:魔力感知”を使い、壁やトイレに施された魔術の魔力を感知し続けた。自分の中にある魔力を認識出来るようになってからは自分の魔力も感知し続けた。気が狂いそうになっても、出来ることがあるならとやり続けた。
全ては、力を付けて復讐する為に。
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