第16話

「前に見た時から、“魔力支配”ってスキルが増えてるよ……僕のステータスの中でビャクが強くなれるって思ったのはどこなの? 僕には強そうには見えないけど」


「まず、一つはスキルの体術を初めから持っているのが良い。このスキルは何年も訓練してやっと手に入るものだ。スキルがある状態で1から訓練すると、無いのと比べて何倍も効率良く進めれるからな」

「あともう一つ、職業が村人なのもいいな」


「職業が? だって村人だと武器を持った時にステータスが半減する雑魚職業だって! ……使い物にならないってみんな言ってたよ……」


「そう落ち込むなケンジ。ケンジの言った通り村人という職業では武器が持てないに等しい。でも武器が持てないのなら自らの拳で、脚で、身体で戦えばいい。拳術や体術なんかとぴったりの職業じゃ。それともう1つ、これを知る者は今は少ないが職業の中には鑑定の水晶では分からない効果がある」


「水晶で分からない効果? それって……」


「その効果はな、例えば“剣士”だと1つは“剣を持った時に攻撃のステータス値が上昇する”というのがあるが……もう1つ隠れた効果は持っている剣の切れ味が上がったり刃こぼれしにくくなったりと、剣の品質が少し上がることなのだ」


「装備している武器の品質……?」


「そう。これは殆どの職業に当てはまるが、ステータスに直接関係しない様な効果がある。もちろんケンジの“村人”にもある……が、村人は少し特殊な例でな……村人のもう1つの効果は“経験値やスキルポイントが多く貰える”というものになる」


「それが本当なら、めちゃくちゃ強いんじゃない? 冒険者の中に職業:村人の人だって……」


「冒険者や騎士の中に職業が村人の人間は誰一人としておらんよ。村人は皆、村を持ち農業だけをして生活をしている。考えてみろ、武器を持って戦えない村人でも、この世界に農業は無くてはならないものだ。経験値を得る機会が少ない村人だからこそ、経験値やスキルポイントが多く貰えると。当然、農業に関するスキルだってある。農具は武器とはカウントされないから、普通に使えるしな」


「………………確かに、それなら納得できるね。この世界では職業やステータスが重視されるみたいだし、わざわざ職業:村人の人が冒険者や騎士になろうとはしないよね」


「そうだな。それで本題に入るが、ケンジは強くなりたいか? 先程は面倒を見ると言ったが、最後の決断はケンジ自身の気持ちだ。ケンジが強くなりたいという想いがなければ意味がない」


「僕は……僕は、強くなりたい……他の誰よりも強くなりたい。バカにしてきた人間を圧倒できるくらい強く」


「そうか。なら決まりだな!」


「これからもよろしくね! ビャク!」


「訓練……いや、修行は明日から初めるぞ!」


「ビャクなんかノリノリじゃない?」


「……うるさい。今日はもう寝るぞ」


 声には出さない、だがケンジの眼の奥に強い意志が宿る。スタートは遅れてしまったけど、僕を虐めてきた人間よりも、僕の大事なモノを奪う奴らよりも、この世界に一緒に来たクラスメイト達よりも。僕は絶対に強くなる。と



 静かに誓いを立てるケンジを薄目で見るビャク。その雰囲気や横顔からケンジの中で強い想いが生まれているのを察する。ビャクの目には、ケンジの想いはケンジ自身を傷付ける程の熱量に感じた。


 一瞬、ケンジの髪が自分と同じ白銀に見えた気がしたが瞬きをすると黒髪に戻っていた。……気のせいだろうと、目を閉じた。

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