第10話

 ここ娼館での生活が始まって、もう半年が経とうとしていた。あれから1週間に5日のペースで“お客様”が来店されて仕事をしている。


 今では仕事にも慣れたもので、僕の上ではお客様が奇声を上げている最中ながらこうして回想に浸る余裕すらある。


 異世界に転移させられてから本当に色々あった。

僕の場合思い出したくない記憶が多いけれど。


 今日も無事仕事が終わったようだ。

 使用人さんの話では次で娼館の仕事は終わりらしい。この半年はとてもとても長く感じた。


「ケンジ君今日もよく頑張りましたね」


「ありがとうございます。こうして仕事ができるのも使用人さんのおかげですよ」


「……次で最後ね」


「急に次の仕事で終わりだなんて言われてびっくりしちゃいました」


「十分気をつけてねケンジ君。次の仕事は嫌な予感がするの」


「嫌な予感? それって……」


「これは騎士達から聞いた噂話なんだけどね、次の仕事は第一王女のミラー様が受け持つらしくて私や見張りの騎士がこれまでみたいにサポート出来ない可能性が高いの」


「このタイミングで何故第一王女が出て来るんでしょう?」


「わからないわ。とにかくケンジ君気をつけてね」


「わかりました。使用人さん教えて頂いてありがとうございます」


「うふふ。ケンジ君は変わらないわね。私の名前はシータよ、因みにあそこからこちらをチラチラ見ている騎士はマックスって名前よ」


「ありがとうございますシータさん! マックスさんも今までありがとうございました!」


 マックスは慌ててドアの向こうに隠れてしまう。


「彼、恥ずかしいみたいね」


「お2人の名前が知れて、お礼が言えて良かったです!」


「後の片付けはこちらでやるから、今日はゆっくり休みなさいね」


 こうして仕事を終えた僕は朝までぐっすりとベッドで眠った。そして次の日の朝


「いつまで寝ている! さっさと起きろ!」


 見慣れない鎧を身に纏った騎士に無理やり起こされる。目を擦りながら洗面所に行き、支度をした僕はいつも通り仕事をする部屋に行くとそこには、今までの“お客様”と同じ人間かと疑ってしまう程に美しい女性がこちらを向いて座っていた。


 小さい顔に大きな目、身体には余計な脂肪は付いておらずスラッとした体型、髪もさらさらでよく手入れされているのがわかった。


「初めまして。ミラーと申します。今日はただのミラーとしてこちらに来ましたわ」


「……初めまして。よろしくお願いします」


 僕は美人な第一王女のミラーに見惚れてしまっていた。


 それから、自分の部屋に戻り慣れた手つきで仕事の準備をする。薬の注射も自分で行えるようになっていた。しっかり準備が出来たことを確認して、第一王女の待つ部屋に入る。

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