第8話
娼館に連れてこられトーチさんと出会った後、大部屋に入り騎士に風呂に入るように命令された。
僕は今、人には見せられないくらいトロけた顔をしていると思う。数ヶ月ぶりに暖かい風呂に入った。気持ちが良すぎる。
ゆっくりと風呂を済ませると、テーブルに料理が用意されていた。
「……この料理、僕が食べてもいいものですか?」
「もちろん気に入ったものを食べてくれ! トーチさんから衣食住はきちんとする様に強く言われていてな」
「……うぅ……トーチさん」
その後、お腹いっぱいになるまで料理を食べてふかふかのベッドで朝までぐっすり眠ることが出来た。
次の日の朝、
「ケンジ君……起きてください……ケンジ君」
「………ぅん? ………ここは」
「おはようございます。娼館の大部屋のベッドですよ」
「……あ! おはようございます!」
「朝食の準備は出来ておりますので、いつでもお召し上がりください」
そう言うと使用人の人は部屋を出ていった。
僕は朝食を食べて顔を洗って、自分のステータスについて考えていた。
僕のレベルはまだ1から上がっていない。転移させられたクラスメイトや先生のステータスはレベル1の時点で合計が100前後あった。騎士から説明された、こちらの世界の標準でも60~80はあるという。
僕のステータスの合計は50。クラスメイト達の半分程しかない事になる。職業やステータスが絶対視されるこの世界でどう生きていけばいいのか、これから始まる娼館での日々もどういうものか想像が付かない。
不安を抱えながら部屋で待っていると、使用人にドアの向こうから声をかけられる。
「ケンジ君。早速仕事が決まりましたよ」
「はい! いつでも大丈夫だと思います!」
「わかりました。では1時間後に案内しますのでそのままお待ちください」
そう言って使用人は何処かへと去っていく。
そうして1時間後。見張りの騎士に連れられて地下の部屋に着いた。待合室で待っていると使用人がやってきた。
「ケンジ君、仕事の前にこれを打ちます」
使用人の手には注射器が握られており、黒とピンクがマーブル模様に見える不気味な液体が注射器の中に入っている。
「な? ……そんなもの打つなんて聞いてないです!」
「これから毎回打ってもらう薬になるので慣れてください」
「いやだ! 絶対普通の薬じゃない! やめ……」
そこで僕は気を失った。
「失礼、手を出させて貰いました。さっきまで大人しかったのにあんなに暴れるとは」
「まぁ、これを自分に打たれるともなれば怖くもなるでしょう」
「今のうちに準備してしまいましょう」
「では、お客様の方を見て参ります」
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