第7話

「普通の男娼とは違う仕事? それって一体……」


「ケンジ君は娼館とか男娼の意味は理解できるかしら? 恥ずかしいと思うのだけれど正直に教えて欲しいわ」


「娼館とは……その、お客様の性欲を満たす仕事をする施設であり、男娼は主に女性のお客様を相手に仕事をする……という認識です」


「なるほどね。概ね正解よ! その認識で合ってるわ。お客様はもちろんのことお店で働くスタッフも同時に楽しむ事が大切よ」

「でもね、ケンジ君が与えられた仕事は……普通の男娼の仕事内容とは少し違うのよ」


「普通の仕事内容とは違う……? 雑用って事ですか?」


「雑用じゃないのよね。今から軽く説明するわね。この国には少なからず体格の良い貴族の女性が居るわ。でも殆どの娼館の出入りを禁止されているの」


「出入りを禁止? 何故です?」


「その方達は余りにも性欲が強くてね。男娼の子の倍以上ある体格と強すぎる性欲のせいで、娼館中の男娼の子がしばらく仕事が出来なくなる程なの」


「えぇ……」


「ずばり言うわね。あなたの仕事はふくよかな貴族の女性専用の男娼になる事よ」


「そんな事無理ですよ! 男なので…できる回数に限界があります!」


「えぇ普通はね? ……先程国から支給されたのが強力な精力増強剤よ。これからケンジ君には専属の使用人が1人付くわ、その使用人から薬を投与されるはずよ」


「薬それじゃあまるで……」


「だから言ったでしょ。普通じゃないと」


「国からの指示は“英 健二に関わるな、こちらで管理する”だそうよ」

「でもね、使用人に掛け合って少しでも健二君のサポートが出来るようにするつもりよ! お姉さんにまかせて!」


「……………。まだ混乱してます。けど、トーチさん! 改めてありがとうございます!」


「いいのよ、こんなことしか貴方にしてあげられないもの」


「そろそろ騎士達が来る頃ね……私はあなたの味方よ」


「トーチさん……」


 僕とトーチさんの所に騎士と顔を布で隠した人が来る。顔を隠した人は身長170くらいだろうか、全身黒い服を着ていて騎士の少し後ろにいた。


「トーチ殿お待たせいたしました! こちらの大部屋が例の部屋ですか?」


「私たちも先程着いたばかりだから気にしないで。この部屋は本館からも距離があるし今は使ってない部屋よ、約束通り貴方達で使っていいわ」


「了解しました! 警護として扉の前に1人の騎士を配置させて貰いますのであしからず」


「えぇ、構わないわ」


「ではお客様も待っておられるので早速部屋の準備からさせてもらいます」


 そう騎士が言うと、僕の背中を軽く押して部屋に入るよう誘導された。部屋に入った僕は「えっ?!」と思わず声を上げてしまった。咄嗟に自分の口を手で押さえたが騎士から怒られることは無かった。


 僕が声を上げてしまったのは、この部屋が綺麗なんて言葉では表せない程様々な装飾が施され、キングサイズよりも大きなベッドには煌びやかな天蓋、ソファや机も城にあるものと同等かそれ以上の高級品に見えた。


「おい。手をこちらに」


 騎士に言われるがまま手を出すと縄と手錠が外される。その後、ボロ布の服を回収されて風呂に誘導された。僕はこれからどうなってしまうのだろうという不安でいっぱいだった。

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