第6話
僕はボロボロの服かどうかも分からない布を着せられて、両手を手錠と縄で拘束された状態で騎士に連行されている。
ただ連行されるのではなく街の1番大きな通りの道の真ん中を縄を引かれてゆっくり歩かされている。
少しでも抵抗する素振りがあると、直ぐに鞘に入った剣で殴られる。
手錠をかけられる時に抵抗した時には、「これ以上騒ぐと足の腱を切って二度と歩けないようにしてやるぞ!」と脅された。
僕はただこの耐え難い時間が早く終わってくれと祈ることしか出来なかった…。
街の人々の憐れむような、蔑むような視線や中には僕を指差し笑っている人もいた。
僕が拘束されてからどれ程の時間が経っただろうか。急に騎士から声を掛けられる。
「おい! いつまで下を向いて歩いている、目的の場所に着いたぞ」
顔を上げるとその場所は、昼間だというのにどこか薄暗く甘い匂いが漂う場所だった。最初に感じたのは不気味さだった。
おそらく目の前のの建物が娼館と呼ばれる場所なのだと、これから自分が生きなければならない場所なのだと納得させられた。
「……ここが娼館でしょうか?」
「あぁ。その通りだ」
「僕はどうすれば?」
「ここでしばらく動かずに待っていろ。中の者と少し話をしてくる」
「なぜ僕がこんな目に……」口から出るのは答えのない問答やため息ばかり。それでも、生きたい。生きて地球に帰って家族に会いたい。という気持ちだけで苦痛に耐えていた。
「貴方が噂のケンジ君ね~。初めまして私はこの娼館のオーナーをしてるトーチよ、これからよろしくね~」
「ケンジです。よろしくお願いします」
「ふーん、噂と違っていい子じゃない」
「……あの、噂って?」
「貴方が気にすることじゃないわ! さぁ! 娼館を案内するからついてらっしゃい!」
「はぁ、わかりました」
オーナーのトーチさんに連れられて娼館の様々な施設を案内される。応接室から始まり、衣装等を準備する部屋、娼婦達の共同の生活スペースや部屋割りなどを見て回った。
1番奥の部屋の前に着いた時に、トーチさんが急に振り返って膝を地面について、僕と目線の高さを合わせてくれた。
「ケンジ君、ごめんなさいね」
「トーチさん? 急にどうしたんですか?」
「ケンジ君はきっと何も知らされずにここまで強引に連れてこられたんでしょ? 偉い人から口止めされてるから本当は言っちゃダメなんだけれど、少しだけ話してあげるわ…」
「あ、ありがとうございます。でも、言ったのがバレたらトーチさんの身が危ないのでは? 僕の為にわざわざ危険なことはしないでください」
「…………。驚いたわ。話の内容よりも、会って間もない私の事を気遣ってくれるなんて」
「……じゃあ、話すわね。まず、ケンジ君は普通の男娼としての業務とは少し違った仕事をしてもらう事になっているわ」
「普通の男娼とは違う仕事? それって一体……」
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