第4話
僕達がこの世界に転移して約3ヶ月たった頃、国王から呼び出され全員が集められた。
「皆の者、よくぞ集まってくれた! 騎士達から、訓練を繰り返して皆が順調に成長していると報告を受けた! そこで、近々魔物のいる森に行き戦闘訓練を行うことになった!」
この3ヶ月程で異世界での生活にも慣れてきており、国王や騎士の言うことに反発する事はなくなっていた。
「勇者としての俺様の力を見せつけてやる!」
「私の神聖術で皆さんをサポートします!」
“魔物”という単語にクラスメイト達は喜びの声を上げる者、不安そうな表情を浮かべる者がいる。
すると、第二王女メアリーが立ち上がり
「皆さん落ち着いてください。護衛の騎士はもちろん付けますし、装備もこちらで準備いたします。実際に戦闘訓練を行うのは1ヶ月後になると思われますわ」
そして1ヶ月後、森での戦闘訓練の途中で事件が起こった。
「魔物はどこだぁ!! 早く戦わせろ!!」
勇者の鈴木が1人で騒いでいる。
「鈴木様、もう少しで魔物のいるエリアに着きますのでもう暫くお待ちください」
この辺りから僕以外のクラスメイト達に対する騎士達の態度も変わり始めていた。
「おい奴隷! お前森に突っ込んで魔物連れてこいよ! 連れてこなかったらお仕置な!」
そう言いながら僕の背中を蹴る。クラスメイト達は何も言わず僕の事を見ている。
心の中で「くそ! なんで僕ばっかり……」と呟きながら森に向かって走っていく。
すると、小柄で緑色の肌をした目つきの悪い魔物がいた。
“ゴブリン”だ。
僕は1匹のゴブリンに向かって小石を投げると後頭部に小石が当たる。「グギャ」と声を出し僕に気づいたゴブリンはこちらに向かって走ってきた。
ゴブリンのスピードは想像よりも早く、追いつかれそうになったので全力で皆のいる森の入口まで走った。
なんとか皆の所に帰ってきた僕に
「のろまが! 魔物1匹連れてくるのにどれだけ時間が掛かってんだよ! 帰ったらお仕置な!」
と言って、倒れ込んでいた僕の頭を蹴った。
その瞬間、僕は意識を失った。
ガツン!と頭に強い痛みを感じて目を開けると、そこは訓練場だった。周りを見るといつもと様子がおかしい事に気づいた。
「てめぇのせいで!! 死んで詫びろ!! この奴隷が!!」
「な、なんの事?! 僕は何も……」
「てめぇの連れてきたゴブリンは1匹じゃなかったんだよ!! 隠れてたもう1匹のゴブリンに不意をつかれて山下が……てめぇのせいで山下が!!」
鈴木に胸ぐらを掴まれて持ち上げられる。山下というのはクラスメイトの1人で、鈴木と仲良くしていた。職業は剣士だっただろうか。
「勇者リョウよ! そこまでだ! 戦闘訓練にはもちろん危険が付き物だ! 彼だけの責任ではない! ……が」
国王が言葉を続ける
「お咎めなしでは亡くなった者に示しがつかない! そこで職業:村人のケンジに今回の罰を与える! 其方を娼館送りにし、これから男娼として働いてもらう! ……以上だ!」
罰?娼館?男娼?頭の中がパニックになり理解が追いつかない。何故僕だけが……という言葉で頭の中がいっぱいだった。
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