賞与は後輩のために
シヨゥ
第1話
「決算賞与が出たぞ」
上司からそんな言葉とともに封筒を渡される。もちろん中に現金が入っているわけではなく、いつも通りの給与明細が入っていた。
「来年度も頑張ってくれよ」
そう言葉を残して他の同僚のところへと歩いていく。
「先輩、いくらもらったんです?」
上司が去るのを見計らったかのように後輩が近づいてきた。
「言えるかよ」
「教えてくださいよ。私なんてゼロですよ。ゼロ」
「そりゃあ入社したばかりだから仕方がないだろう」
「いいなぁ。なんか奢ってくださいよ」
人懐こい奴だが今日はやけにグイグイとくる。
「別にいいけどさ」
そう言うと、
「本当ですか!」
と腕を掴まれた。
「って、冗談ですよね~」
がすぐに手を放して椅子に座る。
「冗談じゃない」
「えっ?」
「冗談じゃない。今回の支給額一杯までだったら奢ってやる」
「支給額一杯……具体的には?」
「言えるかよ。オーバーしたらその分自腹だからな」
「これは難しくなってきましたね」
その晩、後輩とふたりきりで遊び歩くことになった。支給額をやすやすと超えていくあたり自身の評価が高いのかな。なんて思わないでもない。まあ最初から後輩に払わせる気なんてないのだが。これで少しでもやる気になってくれることを祈るばかりだ。
賞与は後輩のために シヨゥ @Shiyoxu
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