第15話 GW② 動物園デート
GW二日目。
俺達は電車に揺られ横浜に向かっていた。昨日もまあまあ出発は早かったが、今日は動物園の営業時間も考えて開園と同時に入れるように出発した。
「ねぇ~悠くん~なんで横浜まで行くの~?動物園なら上野動物園でも良かったんじゃないの?」
日菜乃が少し不満げな表情で言った。
「確かに上野動物園もいいかもしれないが、今日行く『よこはま動物園ズーラシア』の方が満足すると思うぞ?」
俺は自信ありげに言い返した。
「ほんとに?じゃあ期待しとくよ?」
そう言いながらもまだ若干の不満を持つ日菜乃だったが、まあ着いたら驚くだろう。
俺達が今日行く、よこはま動物園ズーラシアは「生命の共生・自然の調和」をメインテーマに掲げている。生息環境展示や世界の気候帯・地域別にゾーニングすることで世界旅行が出来る動物園として植物や自然環境を学ぶことが出来る。
ぶっちゃけ簡単に言えば、動物園でお勉強が出来るということだ。
「よーし、じゃあ見て回るか」
「なんか私が想像していた動物園とは違う感じがする」
「ああ、そうだと思うよ。ここは動物本来の生息環境を出来るだけ再現しているからな。まるで現地で見ているかのような雰囲気で見れるのが良いところだ」
日菜乃が立ち止まり、何かをじっと見つめていた。
「日菜乃どうした?」
「……レッサーパンダが、レッサーパンダがいる!」
「お前レッサーパンダ好きなのか?」
「うん!めっちゃ可愛いじゃん!ほら!あの木の上で寝てる子可愛い♡」
木の上を見ると確かに熟睡していた。俺も前はあれくらい熟睡していたが最近は日菜乃が無理やり起こしに来るため熟睡には程遠かった。
「ん?こいつら一日のほとんどは木の上で過ごすらしいぞ?」
「えー、じゃあ降りてきてくれないのかな。もっと近くで見たいのに」
日菜乃は少しがっかりした表情をして肩を落とした。
「あ!あっちにカワウソいる!」
日菜乃はカワウソがいる場所が分かるや否や全速力で走って行ってしまった。
おいおい、レッサーパンダはもういいのかよ……。俺は急いで追いかけた。
「やっぱりカワウソは可愛いな♡」
日菜乃はじゃれ合っている二匹のカワウソを満面の笑みで見ていた。
「ねえねえ、悠くん。この二匹なんか私達みたいじゃない?」
「そうか?」
「そうだよ、この覆い被さってるのが私で下敷きになってるのが悠くんだよ」
「いや絶対違う」
俺は全力で否定した。
「違くないよ。この子、いつも私に振り回されてる悠くんみたいだよ」
「それはその子が可哀想だから言うな……」
展示ゾーンも終盤に差し掛かったところで再び日菜乃の足が止まった。
「日菜乃、今度は何を見つけたんだ?」
「ミーアキャット!」
「さっきの二匹は分かるが、ミーアキャットって可愛いか?」
「可愛いじゃん!この何考えてるか分からない表情が良いんじゃん!そしてこの立ち姿!真っすぐで綺麗だよね!」
――――なぜ俺はミーアキャットについて熱弁を振るっている日菜乃の姿を見なければいけないのか、全く分からなかった。
*
「日菜乃どうだった?楽しかったか?」
園内を回り終えた俺達は併設されたレストランで昼ご飯を食べていた。
「うん!普通の動物園と違って自然を感じられながら回れたからすごく楽しかった!」
「そう言って貰えるとここを選んで良かったって思えるよ」
「ライオンとかヒョウも迫力があって凄かった!」
「だな、あの環境だからこそ味わえる迫力だったな~」
「でもやっぱりパンダも見たいから今度は上野行こうね!」
「りょーかいでーす」
最後に俺達はお土産屋さんに立ち寄った。
案の定、日菜乃はレッサーパンダとカワウソのぬいぐるみを買った。
「まだ帰るには早いし、横浜に来たんだから中華街寄って帰るか」
「さんせーい!」
日菜乃のテンションが更に上がった。
そういえば忘れていたが、こいつ大食いだった。俺は少し財布の心配をするのであった。
中華街に着いた俺達はひたすらに食べ歩きまわった。
豚まん、北京ダック、台湾チマキ、そして豚角煮まんとかなり食べた。
お昼も食べてしまっていたので俺のお腹は限界に近かった。
「日菜乃?そろそろ、終わりにしないか?」
「え~、まだまだ食べ足りないよ。今度は焼き小籠包が食べたい!」
行こうなんて誘うんじゃなかった。日菜乃の終わりが見えない……。
結局、日菜乃はふかひれスープ、ごま団子、エッグタルトに台湾かき氷と食べに食べまくった。相変わらずの化け物っぷりを見せてくれた。
「今日はとりあえずこんなもんかな~、ごちそうさまでした♡」
俺の財布はすっきりしてしまったが、日菜乃が満足してくれたならそれでいい。
「よし、じゃあ帰るぞ」
「あ!待って!悠くん!」
「なんだ?」
「お土産に豚まんとエッグタルトと水餃子買って~、お願い♡」
もし、仮に、仮の話だ。日菜乃と結婚するようなことがあれば食費だけで月にいくら掛かってしまうのかと考えただけでぞっとしてしまう。
本当にその綺麗な身体の一体どこにそれだけの量の料理が入るのか不思議でしかなかった。
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