第7話:猫舌さんのコーヒーじゃらし。③

 日野との関係になった翌日。


 今日は祝日で、学校も休みだ。


 ボッチで引きこもりな俺は、普段の休日だと、毎度の如くベッド神の領域の中でぬくぬくと、ゲームをしているのだが、今日は──。


「お、お待たせって?!グフオオォ!!!!!」


 清楚で天使な美少女に、俺は思いきり腕を引っ張られ、あの場所へと、連行されていた。


「女の子、待たせるのはだめ~」


「いや、まだ約束の一時間前だぞ!」


 まぁ、約束の一時間前に来ている俺も、ツッコミを入れる資格はないのかもしれないが……。


 だが、今はそんなことよりも俺の思考は停止状態になってしまっていた。

 なぜなら、日野の私服姿が抜群に似合い過ぎていて、俺を殺しにかかっていたからだ。

 髪はいつも通り長い黒髪をポニーテールにしているのだが、ストレートではなく、MIX巻にしており、ゴムではなく、白いシュシュでまとめてある。

 そして、そんな髪型にばっちりとあったコーデにまた目を惹かれてしまう。

 上は薄手の白いブラウスに、下をブラウンのマーメイドスカートで合わせていて……もう何というか、完璧でございますとしか言いようがない!マジで日野の可愛いさが引き立っている。


「それにしても、私服めっちゃ可愛いんだな。前は学校帰りで制服だったからな。制服も似合うけど、私服姿の日野も最高だな!」


「き、きゅ、急にそんなこと言わないでよぉ~。それに、雲里君もめちゃくちゃ格好いいし(ボソボソ)」


 照れてるのやっぱ可愛い~。最後のボソボソはようわからんかったが。


 街の周りも、日野の可愛さに気が付き、じっと見ている野郎も多々いる。


 まったく、けしからん。俺の彼女に向かって、そんなはしたない目を向けよって!


 ……うそついた。ただの親友でっせ。


 そんなこんなと言った感じで、腕を強引に引っ張られながら、俺と日野はカフェ『猫じゃらし』に入店した。


「いらっしゃいませー」と、お洒落なイケメン店員さんが声を掛けてくれる。


 俺と日野は、昨日も座っていた二人席の丸テーブルを見つけて、そこに向かって、椅子に腰下ろした。


 昨日のあの瞬間から、日野は俺に対して、近寄り難い空気を出さずに接してくれるようになったため、俺は何気兼ねなく、彼女にこんなことを訪ねていた。


「それにしても、昨日の俺に信用できる要素とかあったか?」


 すると日野は、一息ついて微笑みながら、こう返してきた。


「雲里君は別に昨日からじゃなくて、前々から信頼していたよ。それが昨日から、距離が近まったから、こうやってお話しているだけ」


 そうなのかぁ~って、えっ……前々からって?


「いつからだ????」


 俺が『?』マークを連打しながら、そう尋ねた。


 すると日野は、


「それはねぇ~……あの時から」


 溜めたくせに簿かしやがったなコイツぅ~。


 でも、今はこうやって、日野が幸せそうな顔で、笑ってくれることがただただ嬉しい。


 だから、俺はこう言った。


「日野のオススメ、他にあれば教えてくれ。……後、ちなみに今日も俺が奢るから、好きなの頼んじゃってくれ!」


 そう、また友達である日野と、何度もこの場所に通えるように。


 もし、日野に奢ってもらおうとする日が来たとしたら、それは俺が財布を忘れちゃった時か、それか、俺の恋人になってくれた時かな。


 だって俺──雲里葉瀬は日野水葉のことが好きだから──。

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