≪護≫1

 隼人さまが、死んでる。

 ゲームでいうと、ライフがゼロ、みたいな。

 明日は、パーティーに行くらしい。場所が赤坂のホテルと聞いて、すごいなと思った。

 でも、わからない。実際に行ったら、疲れるだけかもしれない。


 今日。帰ってきたら、髪型が変わっていた。

 黒い髪が、耳の上くらいの長さになっていた。めちゃくちゃ、かっこよく見えた。


「モデルになろうとか、思わなかったですか」

「は? どうしたの? 頭でも打った?」

「打ってないです。ご自分でも、わかってますよね? かっこいいの」

「かっこよくないよ」

「そういえば、隼人さまのご両親に、お会いしたことがないです」

「そうなの?」

「はい。あちらには、一日しか、いなかったんで」

「そうだったのか。あんまり、似てないと思う」

「え。そうなんですか?」

「うん。実際に会えば、分かると思う」


 隼人さまは、僕が作った夕ごはんを食べて、早めに風呂に入った。

 居間に戻ってきた時には、プラモデルの箱を抱えていた。

「作るんですか」

「うん。護もやる?」

「やらないです」

「だよな」


 単色のパーツに、銀色の、ステンレス製っぽい道具で、塗装をしていた。

 エアーブラシというらしい。白いマスクをつけていた。なぜか、僕もつけさせられた。


「もういいよ。外して」

「はい」

 マスクを外して、座卓に置いた。

「どのプラモも、同じに見えます」

「それは、残念だな」

「楽しいですか? それ」

「うん。護も、なにか、趣味を作ったら」

「趣味いー?」

 ばかにしたみたいな返事になってしまった。

「自分が好きなものとか、ないの」

「漫画とか、ゲームとかは、好きですけど」

「アニメは?」

「あんまり……」

「そうか」

 がっかりしたような顔をしていた。嘘でも、「好きです」と言った方がよかったんだろうか。

「ロボットばっかりですね」

「うん。プラモデルだし。ロボとか、飛行機とか。あとは戦車とか、かな」


 午後九時くらいに、おひらきになった。

 歯みがきをしに、お風呂のまえにある脱衣所に行ったら、隼人さまが鏡を見ていた。

 悲しそうな顔をしていた。

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