≪隼人≫4

 プラモ部屋が、できた。

 もう、すごい嬉しい……。どうにかなりそうなくらいだった。

 ミャーに見せてみたけど、さめた顔をしていた。ミャーは、飯田と違って、アニメにはそれほど興味がないので、当然のことだとは思った。

「よかったねー」

 しみじみと、それだけ言われた。


「隼人が、一人暮らししてるっていう情報が、大学の頃の知り合いに知られてきてるよ」

「え。なんで?」

「僕が、うっかり。口をすべらせてしまったんだよね」

「お前なあ……。誰に言ったの?」

梶本かじもととか。田辺とか」

「さいあく……」

「泊まりたいって、言ってた。なんなら、住みたいって」

「ぜってー、いやだ」

「隼人。しゃべり方が」

「ごめん」

「いいけどさ。べつに」


 ミャーとは、大学が同じだった。飯田は、別の大学。

 飯田とも遊んでいたけど、大学の部活は、ミャーと一緒だった。というか、ミャーが俺にくっついてくるので、自然と同じ行動をするようになっていた。

 ミャーは、小さい頃に両親を亡くしている。母方の祖父母に育てられたからか、ことわざとか、昔の風習とかに詳しい。

 べたべたとくっついてくるミャーのことを、うっとうしいと思ったこともあった。

 でも、ずっと会わないでいると、さびしくなる。俺にとって、ミャーは、同い年の弟のような存在なのかもしれない。


「僕の写真をさ、貼ってもいい? この家に」

「いいよ」

「去年の秋に、高尾山に登ったんだよ。紅葉の、いい写真が撮れたんだ」

「そうか。楽しみにしてる」

「へへー」


* * *


 平日の夜に、篠崎が来た。大学の頃にできた友達の一人だ。

 プラモ部屋を見せたら、めちゃくちゃ笑っていた。


「やばいんだけど。まじ、うける」

「俺の、夢の結晶だよ」

「で、なに? 壁に、絵を描いていいの?」

「うん。描いてもらっても、いいかな」

「いいけど……。緊張するな。やり直したり、できないだろ。

 ベニア板とかに描くんじゃ、だめなの?」

「壁紙は、上から貼りかえたりもできるし。がっつり描いてもらって、ぜんぜん構わないよ」

「時間がかかるよ。それは、いい?」

「もちろん」

「誰を描いてほしいとか、ある?」

「ある」


 希望のキャラクターを何人か挙げた。「ロボばっかりだな……」と言われた。

 ロボで、何が悪い!と思った。

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