第3話 ゴブリンよ、おれは帰ってきた

 ――ああ、それにしても、なんて空が高い!


 ようやくだ。

 俺の人生が軌道に乗り始めた。

 冒険者ギルドで調べてもらったところ、俺はLv60のマモノ使いだった。

 平均的な冒険者よりは上なので、そこそこにやっていけた。

(カーミィは、かなり高Lvだったようだ)


 但し、オッパイがどうにも隠せんので、女用の装備をせねばならず、俺は魔族の女マモノ使い、タマジョーということになっていた。


 ギルドで、良さげなクエストを受注し、仲間の魔物たちと共に片付けていた。


 夜のお供は、サキュバスが良いのだが「私、ビアンじゃないから」と拒否られた。

 俺のマモノ使いスキル〈従属〉の効果はもひとつ効果が薄かった。

 ミノタウロスのダンナは、セクハラをやめてくれなかったりな。


 夜のお供はラミアがしてくれるのだが、俺がイケメンになった途端、やけにべったり粘着質になったり、妙な源氏名があって、そこが引っかかっていた。

「ああん、タマジョー王子ぃ、アクメ姫は首絞めプレイが好きな、ドMなのですぅ〜。キャ」


 ――アクメ姫……。

 なんか、ミダラ姫とかと同じ、ソレ系の眷属では?

 こっちの世界にも、そんなのが、いるのだろうか…………。


 なるべく距離を置いた方が良かろう……。

 早めに、合体材料にした方が吉だな。


 そんなわけで、独り……カーミィとの合体を思い出しながらってのが、俺の定番となっていた。



 ――また、あのうめき声か……。


 賢者タイム後、いつもの俺なら、速攻で爆睡出来た筈なのだが、しばしば悪夢にうなされ、むっくとはね起きた。


 どうにもこうにも、あどけない少女たちの、うめき声が忘れられず目を覚ましてしまうのだ。



 ……俺がこの世界で最初に見た光景。それは地獄だった。


 冒険者ギルドの掲示板に貼られてたクエストのビラに、そのゴブリンの魔窟の掃除があった。


 どうも誰もやりたがらないらしい。

 報酬も大したことなく、その割に面倒で割に合わないと言う。


 ゴブリン一匹一匹は弱いのだが、ヤツらは、もの凄い数でこられてしまうと言う。


 そも、我々ヒトもかつては――他のネアンデルタール人などの他のホモ属亜種から、数の力で地上の覇権を勝ち取ったという話を聞いたことがある。

 ホモ・ネアンデルターレンシス、ネアンデルタール人なんか、ヒトより脳の容量も大きく、筋力も優れたというじゃないか。


 数の力か……。


 悪夢を消し去り、再び、快眠を得るためにも。

 これ以上、被害者を出さないためにも。

 何か良い手はないか? と暫くくすぶっていたところ、俺はひらめきを得た。



「あー、諸君、クエストを受注した。本日はゴブリンの魔窟でのヤツらの殲滅作戦を敢行する!」


 数でこられるならば、そうさせないまでだ。



 ゴブリンどもよ、俺は戻って来た! 悪夢を消し去るために。


 確か……俺、小柄な魔物のゴブリンだった時、なんとか通れるくらいの狭い通路を通ったよな。


 俺はあの日、通ったダンジョン内に、その通路を見つけ出した。

 その狭い通路は、もはや我々では通れないので、別ルートから回り込んで向かった。


 狭い通路を抜けると、開けたところへと出るので、そこで俺たちは、張り込む。


「地道な作業になるが、ヤツらを一匹ずつ誘き出し、プチプチ潰してゆくしかない」

 

 ミノのダンナが答えを求めた。

「どないして、誘い出しますのん、タマ子はん」


「うむ、サキュ子とアクメのフェロモンの散布だ。頼むぞ」

 

「面倒臭いわね……」「アクメ姫、頑張っちゃいます!」


「二人共、なかなかにナイスバディだ。いける!」


 二人がそれぞれ、独りでゴソゴソ始め出すと、俺はフェロモンをダンジョンの奥へと送り込むよう、パタパタと両手に持ったうちわで、精一杯扇いだ。


 やがて、ゴブリンが一匹ずつやってきたので、ミノのダンナがプチプチした。

 しかし、30分置きに一匹くらいのペースだった。


 五匹潰したところで、サキュ子とアクメのMPが底をついてしまいそうだった。


「タマ子はん、効率、ごっつ、悪ないでっしゃろか?」


「タマ子、いつまでこんな事やらせるのよ? 私、男からエナジー貰わないとしなびちゃうわ」


「タマ子王子、アクメ姫頑張っちゃいましゅ……ぷしゅるるるー……バタっ」 


 案するでない!


「ふははは! ならばアレを使う時が来たか!」

 言いながら、俺はカーミィの荷物を取り出していた。


「ん? それは、合体用魔法陣ですやん」

 

 俺は、その絨毯じゅうたんを広げて言った。


「サキュ子にアクメ! 主人が命ずる。合体せよ! 更なるフルパワーフェロモンを散布するのだ!」

 幸い合体すれば、新たな魔物となるのだからMPも完全回復するという仕様だった。


「誰が主人よ。多少、〈従属〉が使えるからって、逆らおうと思えば、逆らえるんだからね!」


「あ、そういや、サキュ子は女同士はダメなタイプだったか……」

 俺は思い出して焦った。


「でも、アクメの尻尾ってイイわよね。私ソレ欲しかったの。男たちをソレでしばきたいなんて思ってたし。良いわよ、合体しても」

 俺は、オッパイを撫で下ろした。


「でも、王子ぃ、女同士って、どうやって合体するんですか〜?」


 実は、その謎だった合体方法だが、俺は夢で見て知ったのだった。

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