恋の呪縛
七山
第1話 始恋 【始まりの恋】
君に会った時、それは始まった。
どうしてそうなったのか、いつそうなったのかは理由を探しても見つからない。
これは呪いかもしれない。でも僕はこの呪いを恨んだりはしていない。
◇◇◇
彼女にあったのは僕が中学二年の冬。
珍しく転校生が来ると聞いて学内はザワザワとしていた。性別は男か女か、イケメンなのか可愛いのか、そんな話で持ち切りだった。
「全員、席につけー」
前のドアから担任が入ってきた。
それと同時にクラス一同席に付き、いつも以上に真剣にSTに向き合った。
「もう知ってると思うが、今日は転校生が来た。入ってこーい」
太い声と共に教室に見慣れない顔が入ってきた。髪はショートで短く、でも男子と見間違える事は100%ないと言えるような美形をした女子が俺たちの教室に入った。
声が出なかった。
きっと俺だけじゃなくて他のクラスメイトも。
黒板に自分の字を書いて自己紹介をしている。
『
「黒川渚です」
声は透き通るように綺麗で、惚れない余地がない。これは一目惚れ、そして俺の初恋だった。
◇◇◇
渚が来てから早くも数ヶ月が経った。
渚がクラスに馴染むのも早くて、すぐにみんなと仲良くなった。もちろん俺も好きな子に好感触を持って貰えるように結構な頻度で話しかけに行った。
それが幸をそうしたのかクラスの男子の中では一番仲が良かったと思う。
「ねー
「おー、いいぜ」
こんな嬉しい事を言われても出来るだけ平然を装えるように務めた。ただそれは傍から見たらバレバレのようで、後から友達に茶化された。
◇◇◇
遊びに行った。
いや、デートに行ったと行ってみよう。
俺と渚は二人で近場のショッピングモールで買い物をしたりして遊んだ。
女子と二人きりで遊ぶのが初めての俺にしたら割と上出来だったと思う。
昼を過ぎて二時頃、少し遅めの昼食をフードコートで食べているときだった。
「実はね、今日遊びに誘ったのは理由があるの」
唐突にそう切り出してきた渚に、俺はどきどきとした。そりゃ女慣れのしていない中坊にそんなこと言ったら、一つのことしか考えれないくなってしまう。それが初恋の相手となったら尚更だ。
「な、なんだよ…」
渚は顔を火照らせ、いつもとは違い目を見てこない。机に視線を当て言いにくそう、と言うより恥ずかしそうにしている。
「あのね……」
顔はまだ赤いが、意を決したように視線を俺の目に向けた。
「私、三年生の
予想外のカミングアウトに頭がついてこない。
何を言っているのかさっぱり、と言う顔が俺の顔にははりついていたと思う。
「でもね、私先輩の本当の性格とか知らないし……もしかしたら性格が最悪とかあるかもしれないじゃん?だから先輩と仲の良い駿に相談して見ようと思ったんだけど……」
悲しい、悔しい、そんな感情が出てこない。
何故か?そんなの好きじゃなかったからに決まってる───いや、ただ単に状況を理解しきれていないだけだった。現実味がなかった。
こんな所で告白もしていないのに振られるなんて思ってもいなかった。
「駿……?」
あまりにもすごい顔をしていたのか渚は心配そうに俺を見た。
そこで我に帰った俺は取り繕うように
「ああ、あの人は性格もいいよ」と言ってしまった。ここで性格が悪いとでも言っておけば良かったのかもしれない。
それからフードコートで相談を受けた。
でも何を相談されたかと聞かれたら覚えていない、と答えるくらいには適当に流してしまったと思う。
恋の呪縛 七山 @itooushyra
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