第16話挨拶

まるも同じよう膝に乗るので充はふくと同じ事を繰り返す。


「二人とも一丁前にヤキモチかしら。私はそんなつもりはないから安心してね」


ハルさんは笑ってふくとまるの喉元を撫でた。


「ハ、ハルさん、俺も…」


するとゼンさんが頬を赤くして顔を突き出す。


どうやらゼンさんもふく達と同じ事をしたいようだ。


「ごめんなさい、あなたはこれで許してね」


ハルさんは色っぽく微笑むとゼンさんの顎を長い指先でサラッと撫でた。


ゼンさんは気持ちよさそうに目を細める、まるで猫のようにゴロゴロと喉を鳴らしそうだった。


ハルさんはそのまま手をヒラヒラとさせてドアへと向かう。


「じゃあ出来たら教えてね」


「はい!」


何故かゼンさんが勢いよく返事をしてハルさんは笑って台所を出ていった。


「はぁーハルさん素敵だなぁ…」


ゼンさんはハルさんが消えた先をうっとりと見つめていた。


「ゼンさんはハルさんが好きなんですか?」


「そうなんだ、ハルさんはみんなのアイドルだから俺なんか相手にされないけど…」


ゼンさんがしょんぼりと肩を落とす。

会った時の明るいゼンさんらしくない。


「そんなこと無いですよ。ゼンさんは初めてきた俺に優しくしてくれました。すごくいい人で素敵っすよ」


「充、お前って本当良い奴な!よし、困ったらなんでも聞けよ」


「ありがとうございます!」


元気になったゼンさんに早速料理の手伝いを頼んだ。


「ふくとまるは危ないから近づくなよ」


「「にゃ…あ」」


二匹は寂しそうにトボトボと廊下に行こうとしてしまう。


悲しそうな後ろ姿に思わず声をかけた。


「あっ!や、やっぱり味見係を頼もうかな…大事な役目だしふくとまるに頼みたいな」


「「にゃ!」」


二匹はピーンと耳と尻尾を立てて急いで戻ってくる。


「でも刃物を使うから手伝って欲しくなったら呼ぶな。それまでは少し離れててくれ」


「「にゃ!」」


二匹はわかったと敬礼でもしそうな勢いで少し離れたテーブルの椅子の上に行儀よくお座りをした。


「本当にお前の言うことは聞くのな…」


ゼンさんは目を丸くしてふく達をみる。


「え?あいつら結構いい子ですよね?」


言えばわかるしそんなに問題あるようには見えなかった。


「それはお前だから言えるのかもな、ほらそれよりも何するんだよ」


ゼンさんは早くハルさんに食べさせたいのか買ってきた材料を担いで催促する。


「あっ!はい、まずは…米を炊きます!」


充は白いツヤツヤのご飯を思い浮かべて舌なめずりした。


「米か、米はあるんだ…確か倉庫に…」


ゼンさんは材料を置くと倉庫へと案内してくれる。


台所の奥にある薄暗く、少しひんやりとした倉庫には根野菜や乾物、米などが置いてあった。


「わー!結構材料揃ってるじゃないですか」


充は何があるか確認しながら見て回る。


「それはわかってるが今いる奴らは料理が出来ないからさ…だから最近はねこまんまばっかりだよ。まぁあれは美味いけどな!」


ゼンさんは思い出したのか鰹節が置いてある棚をじっと見つめた。


「前は誰が作ってたんですか?」


「それは…」


それまで流暢に話してたゼンさんが言葉を濁した。


「なんかあるんすか?」


「気にするな!それよりも米はここだぞ」


ゼンさんがドン!と叩いた大きな袋をみて充はテンションが上がりゼンさんが躊躇った事など飛んでいった。

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