第15話料理
「ふふ、悪い悪い」
充は警戒しながら後ろからついてくるふくに笑って謝る。
まるはそんなに気にして無いのか平気で人の横を歩いていた。
「ふくはお風呂が苦手なんだな、まるは大丈夫なのか?」
「にゃ~ん!」
まるが同意するように鼻を突き上げて返事をした。
「そうか、まるは水は平気なんだな。ならあの広い風呂で一緒に入れるかな?」
充が楽しそうに話すとまるはまるで一緒に入ると言うように甘えて充の足に擦り寄ってきた。
「にゃ!にゃー!」
するとふくも負けじと足に擦り寄る。
「ふくは水が苦手なんだろ?無理するな」
充はふくの頭を撫でてやった。
三人で話しながら先に進んでいるといつの間にか大きな扉の前に来ていた。
「あれ?ここはなんだろ」
充が扉に手をかけようとすると…
「そこはダメよ」
「え?」
突然の声に後ろを振り向くと綺麗な女性が声をかけてきた。
「そっちは南側になるから入っちゃダメよ」
「あっ…」
そういえば寅吉さんがそんなことを言っていた。
いつの間にか南側に繋がる方へと来てしまったようだ。
「すみません、知らなくて…えっとあなたは?」
充がうかがうように声をかける。
この屋敷にいると言うことはこの人も猫又なのだろうか…
思わずお尻に目がいった。
「そんな見て私のお尻に何かある?」
「す、すみません!見るつもりじゃ…」
充は顔を真っ赤にして謝った。
「別にいいのよ、私はハルよ。あなたが新しくきた子ね」
ハルさんはよろしくとウインクする。
白い肌に真っ暗な長い髪がセンターからきっちりと分かれていて美人だった。
「よ、よろしくお願いします。充って言います」
充はペコッと頭を下げた。
「この先は何もないから一緒に戻りましょうか」
ハルさんに促されて充は頷き元きた道を戻る。
角を曲がる時にそっと開けられなかった扉を振り返る。
あの向こう側には何があるんだろ?
猫又の秘密かな?
気にはなるが秘密を暴く気はない。
来たばかりだがふくとまるに懐かれ頼られる事が居心地良くなっていた。
種族こそ違うがまるで自分の兄弟や子供のように感じていた。
充は気にしないように扉に背を向けて、ふくとまると共にゼンさんが戻ってないかと台所に戻ることにした。
台所に戻るとちょうどゼンさんがダンボールに食材を積んで運んできた。
「ほら、充。頼まれてたもんだぞ、でもこれで何するんだ?」
充はダンボールの中を確認してニコッと笑う。
「なら、早速これでご飯作ってもいいですか!?」
「あら、充くんが作ってくれるの?楽しみね」
ハルさんがいつの間にか着いてきていて横から顔を覗かせた。
近い距離にびっくりして横を向くと鼻先が触れる。
「あっ!すみません」
充が謝るとハルさんは気にした様子もなくそのまま鼻先を近づけてちょんと充の鼻に当てた。
「美味しいご飯楽しみにしてるわ」
「は、はい…」
ポーっとする充に下にいたふくとまるが充の足に飛びついた。
「痛ててて!」
爪を立てられて思わず飛び跳ねる。
「にゃー!」
「ふー!」
何やら機嫌の悪い二匹に屈んで様子をみると、膝に足を乗せてハルさんと同じように鼻先を近づけてきた。
「なんだ?ふく達もやりたいのか?」
充は自分から鼻を近づけて少し濡れたふくの鼻に自分の鼻をくっ付けた。
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