第13話遊び

「さてと…」


部屋に入ってとりあえず布団を片付けようとするとふくとまるが布団に絡まって遊んでいる。


「ほら、布団をしまうから退いてくれ」


二匹はわかっているのかさらに布団の奥へと入ってじゃれ合い暴れ回っている。


充は仕方ないとしばらく布団で二匹と遊んでやった。




「もういいだろー」


充は床にへたり込む、あれからふく達は飽きることなく部屋のなかで遊び回っていた。


充の服に飛びついたり机の上に登ったり降りたり、棚に登って物を落としたり…


元気いっぱいに暴れ回り飽きることなく追いかけっこを繰り返す。


いい加減充の方が疲れてしまった。


「ちょっと休憩…」


充はバタンと布団に倒れ込んだ。


するとその音に驚いた二匹は充のそばに寄ってくんくんと匂いを嗅ぐ。


「にゃーん?」


倒れる充に大丈夫とでも言うように顔を擦り寄せた。


「大丈夫だよ!」


すると充はガバッと起き上がって二匹を驚かす。


「「シャー!」」


すると二匹は驚いて毛を逆立てて物陰に隠れてしまった。


「あ、ごめん」


あまりに怯える様子に充は二匹に謝るが二匹は中々出てきてくれない。


「ごめんよ、そうだ!なんか食わないか?お腹空いたろ?ご飯にしようぜ!」


充の声に二匹は恐る恐る顔を見せた。


「ほら、前に食べたたつお節覚えてるか?」


「ニャー…」


「ミャーン」


二匹はそろそろと充に近づいてきた。


「よし、じゃあ寅吉さんのところに行こうぜ」


充は二匹と下に降りていった。


トントン!


「寅吉さん」


充が部屋に声をかけるが反応がない、どうやら部屋には居ないようだ。


どうしたものかとゼンさんの部屋を訪れる。


「んーどうしたー」


ゼンさんは寝てたのか細い目をさらに細くして部屋からのそのそっと出てきた。


「この子らがお腹空いたみたいで、飯ってどうすればいいんですかね?」


「ふぁ~、もうそんな時間か…俺もお腹すいたし一緒に行くか」


ゼンさんに連れられて下の階へとまた戻ると寅吉さんとは逆の廊下を歩き出す。


「この先に食堂があるんだ、そこに行きゃなんかあるだろ」


廊下を少し進んだ先の部屋にゼンさんが入ると充も続いた。


そこはテーブルが四席あり座布団が敷いてある。


奥にカウンターがありその向こう側がキッチンになっているようだった。


ゼンさんはキッチンに行くと扉をパタパタと開けてなにかないかと探っている。


「あの、勝手に食べていいんですか?」


「ん?ああ、ここに住む者なら自由に使って大丈夫だ」


そう言って棚を漁るとかつお節を取り出した。


「あとは~」


炊飯器を開くと熱々のご飯が入っている、それをお茶碗によそってかつお節をかけた。


「ほい、出来たぞ」


「あ、ありがとうございます」


充は受け取ると茶碗の中を凝視する、それはただご飯の上にかつお節が乗っただけのねこまんまだった。

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