第11話迷い

「じゃ、じゃあすみません…」


ゼンさんに頭を下げてそそくさと二階に向かった。


部屋に入ると急いで扉を閉めた。


一人っきりになりようやく落ち着けたが明日の決断次第ではこの部屋から出ていかねばならない…


「でも…猫又って、そんなの迷信か都市伝説だと思ってた…」


何か有りそうだとは思っていたがこんな展開になるとは…

どうしたもんかと畳にドサッと座り込む。


「とりあえず…寝るか」


明日の朝また考えよう。


疲れた充は布団を引くとその上に転がった。


「うわ…すっげぇふわふわ」


布団は日に干されていたようでいい匂いがした。


「こんな気持ちいいの久しぶり…だ…」


疲れから充はすぐに眠りに落ちてしまった。



充は夜遅くにふと目が覚めた。


部屋はくらいが窓からの月明かりに部屋の中からがうっすらと見える。


目が慣れてくると部屋の隅に何か小さな物が丸まっているのが見えた。


なんだと目を凝らすとそれはふくとまるだった。


アパートの時と同じように充の部屋に忍び込み寝ていた。


しかし気持ち戸惑いがあったのか自分のそばではなく離れて存在を消していた。


起こさないように少し近づくと二匹は寄り添い丸まっている。


その姿が何故か寂しそうに見えた…


二人っきりしかいない世界でお互い寄り添うように…


充はそんな二匹をみてふっと肩の力が抜ける。


布団をそっと二匹のそばに移動すると起こさないように静かに横になり、そっと布団をかけた。


ふかふかの布団をかけて充はまたすぐに眠りについた。



ぺちゃ…


冷たい柔らかいものが顔にあたり充は目を覚ました。


「え…」


目を引くと見たことの無い天井の前に柔らかい子猫の手が乗っかっていた。


「くぅ…」


人の上でふく達は寝ていて手が顔に乗っかっていたようだ。


「こいつら、寝相悪いなぁ…」


充は二匹をそっと抱えて自分が寝ていた布団に寝かせる。


二匹は暖かそうに布団の上で伸びをするとそのまままた眠ってしまった。


「ふっ…」


呑気な二匹を見てるだけで笑みがこぼれる。


「充、おはよぉーさん!」


すると扉からゼンさんの声がして勢いよく開いた。


「シー!」


充はうるさいゼンさんに口に指を当てて静かにするように眉をひそめた。


「あっ悪いな」


ゼンさんは寝ているふく達に気がついて口を押さえた。


「ゼンさん次、部屋に入る時はノックしてくださいね」


ゼンさんに注意すると驚いた顔で見つめてくる。


「次があるってことか?」


「まぁ、俺行くとこないし…よろしくお願いします」


「ああ、よろしくな」


ゼンさんは笑顔で手を差し出してくる。


充はその手を握りしめるとふく達と同じような手の感触に苦笑した。


「ゼンさんもやっぱりそうなんですね」


「そういうこと」


ゼンさんは手のひらを広げて充に肉球を見せた。

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