繋いだ 2210年


……ここまで読んで私は古いデータを閉じた。

 閉じざるを得なかった。

 日付を見ると、西暦2110年7月20日とある。

「……ずいぶん情熱的っていうか、ロマンチックな人だったんだなあ。途中で随分とテンションが変わったけどどうしたんだろう。まるで違う人が書いているみたいだ」

 私の頭の中は冒頭のロマンチックな部分と後半の夢見る少女が書いたような文章で頭の中は絡み合ったコンセントのようにごちゃごちゃだった。

「これはおばあちゃんのデータから読み起こしたものだけどおばあちゃんは読み書きできないし。うーん、実に奇妙だ」

 現在2210年では読み書きはもちろん小説が一番の娯楽ごらくとして知られている。

 2110年の頃には読み書きができるだけで大学に入れたというから驚きだ。

 今は誰もが頭の中に辞書を持ち、会話より先に文章を書いたり打ち込む。

 そっちの方が効率が良いからだ。

 うるさくないし、喉を傷めることもない。

 そもそも声を出すこと自体が環境に悪いんだ。

 自分たちでCO2をまき散らしていることに気が付いた人類は読み書き法を作り、人類史上かつてないほど読み書き勉強にちからをいれた。

 ちからを入れるあまり人々は肉体を捨てることを選んだ。

 頭の中を完全にネットに繋げてしまえば、間違った文字を使うことがなく正しい言葉を扱い、争いが起こらないと考えられたからだ。

この小説なのか日記なのかわからない物語に続きを書いた。

 終わらない物語の悲しみを私は知っているからだ。

 終わりのない冒険なんてあまりにも可哀想かわいそうじゃないか。

 おばあちゃん、私がこのお話を終わらせてあげるからね。


 


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