第8話

「なんで僕なんですか」

「そう言うなよ。俺だって妙なことに巻き込まれた側なんだから。組合事務所で暇してそうなやつはお前しか思いつかなかったんだ」

 Vはドーリーに言った。

 組合で仕事の報告をしていたら騎士団の使いが呼んでいると教えられた。

 そして渡された手紙。事情を把握するV。断るわけにも、ということで報告は後日と受付に頼み(普通なら嫌がれるが彼とドーリーは受付と仲がいいので嫌味も言われない)見知らぬ騎士団員と一緒に気まずい馬車を走らせてきた。

「まったく。それで、保証の書類はどれですか?」

「これです」

 そういって渡された書類に目を通してサイン。

「ほかに書類は?」

「ありません。これで結構です。また呼び出すかもしれませんが」

 そう言って書類をまとめる女。

「わかったよ。家にいなきゃ組合にいるか仕事してるかだ」

「何があったんですか」

「おいおいね。飯をおごるよ」

 二人はもうさっさと帰ろうという雰囲気。

「それじゃぁ、帰らしてもらう」

「まったく」

「お疲れ様です」

 そう言って去ろうとする二人。

 それに話しかける一人。


「君、ヴィリア・ハーヴ君じゃないか」

「えっと、お久しぶりです。オーガス先生」

 話しかけたのは団長への報告が終わったということで帰って仕事、つまりバラバラ死体の組み立て、をやろうと考えていた医者。

「元気にしていたかい。学校をやめたと聞いてそれきりだったが」

「えぇ、どうにかこうにか暮らしていますよ」

「知り合いか?」

 ひょろりとした、いかにも子供たちに学問を教えていますという感じの男。これがドーリーから見た医者の印象。

「えぇ、学校にいたころ教えて頂いた方です。オーガス先生、こちら冒険者で同業者のドーリーさん」

「僕はオーガス・アバーノットだ。学校の方で医学を教えている」

「これはご丁寧に。俺はドーリーです。今は冒険者業で食ってます」

 苗字がある教師。これは大抵貴族の証だ。そう思いながら差し出された手に握手で返す。

「君はずいぶんと経験を積んでいるようだね。武器は弓かい」

 ちらりと見えた手首の傷で経験はわかるだろう。しかし

「転職組ですよ。ヴィリアの方が先輩です。確かに弓を使いますが、なんでわかったんです」

「腕だよ。弓を引く腕に筋肉がつくから、左右の腕が非対称になるんだ」

 へぇ、と自分の腕を見比べるが、わからない。

「先生は検視について研究をなされているんです」

 Vは隣からそう口をはさんだ。


「しかしヴィリア君、君も同業ってことは冒険者をやっているのかい」

「えぇ、まぁ、食っていくには仕事がいりますからね。なれれば気楽な仕事です」

「大変だなぁ。ここで長話もなんだから、今夜夕飯を一緒にどうだい。もちろんドーリー君も一緒に来てくれたまえよ。客人は多い方が楽しいんだ」

「えぇっと」

 何か困ってるような顔のV。

 ドーリーとしては、まぁ貴族の屋敷で飯を食うのも初めてじゃないし、Vが行くといえばついていこうかという感じ。

 


「先生、補助の人員についてなんだが」

 どうこたえるか迷っているVとその答えを待つオーガス先生を呼び止める団長。

「手間賃はこっちでだすといっても、あ、君ら、前あったよな。盗賊退治の時だったか」

「お久しぶりです」

「あんたの団だったのか」

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