第6話

「ごめんなさい。調書の方とって書類にする必要があるけどこの時期は人手不足で」

 事務員の女性に連れてこられたのは魔法使いの格好をした中年の女。

 どんな格好って、典型的なやつ。ケープなのかマントなのかよくわからない服に杖。騎士団の補助職の制服ではなく私服だ。

「おたくらが忙しいってことは世の中悪い方に転がってるってことだな」

 ドーリーはそう皮肉を言っておいた。待たされたんだ。このくらいの皮肉は許されるだろう。

「商売繁盛がありがたくない仕事は騎士団と医者くらい。しかしあなた方冒険者はその方がうれしいんじゃなくて?」

 女は女でそう返す。ジョークも行ける口らしい。

「それじゃぁ、最初から、あなたはなぜあの場にいたのですか?」

 そう言ってメモを取り始める女。


「それでまぁ、大丈夫かとあの団員に向かっていた。本人は大丈夫だと言ってたが、まぁおっかねぇよな。街中で派手にやらかすんだぜ。関係なやつが巻き込まれでもしたらどうするんだよ」

「まぁそれについては本人によく言い聞かせることになるかと」

「そうか、まぁそれで、いろいろあって手伝えと。俺みたいな部外者が手伝っていいのか知らんと思ったが、あいつ一人にやらすのも差支えがあるなと思って手伝うことにした。御者は俺が見たときには死んでたよ。ただあいつの魔法のせいかは知らん。それで馬車扉をこじ開けて中を確認した。そしたらあの死体の山さ。そしたらぼつぼつと団員やら応援やらが集まって現場を仕切り始めて、ここまで連れてこられて待機してる。これがすべてだな」

 ドーリーが言い切ったところで女性は書類を完成させる。

 そして素早く見直して

「はい。これで終わりですね。問題がなければサインをお願いします」

とドーリーに渡した。

 ドーリーも同じように見直してサイン。


「あとはあなたの身元を保証する人物がほしいんですが」

「居ないなぁ」

「冒険者ならパーティーの方でいいですよ」

「パーティー入ってないんだ。なかなかいい縁がなくてね」

 女性は困ったように考え

「困りましたねぇ。ご友人とか頼める方いませんか。あなたが冒険者だって保証できればいいんですが」

「飲み屋のねぇちゃんとかじゃだめだろ?大家のばあさんにこんなこと言ったら追い出されるし」

「事情を知ってるならご同業の友人、ってのも難しいんですよね。冒険者って」

 不定休で国中、場合によっては国外まで飛び回る仕事だ。頼んできてくれるような人は少ない。いや

「それなら一人いるかもしれん。こういうのは俺が呼んでくるのか?」

「こちらで使いを出します。住所はどこですか」

 暇な時は組合にいる男を一人しっている。頼んで、来てくれるかなぁ。

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