第5話
第六騎士団本部
「馬鹿野郎」
団長の説教が扉の向こうでかすかに響く。
第六騎士団は比較的予算がある。なので団長の部屋の音が漏れるような安普請ではない。
それを突き抜ける怒声。
「街中であんな魔法ぶっ放すのはさすがの騎士団でもまずかったんだな」
それを苦笑いしながら聞いているドーリーは本部に並べられているデスクに座っている。
ここは本来誰かの席なんだろうが、まぁいいだろう。ここで待ってろと言われたのでおとなしく待ってるのだ。
第六騎士団の本部は皇帝が住まう城から離れた街中にある。
大元をたどれば百年以上前、皇帝陛下の息子の家族を守るために結成されこの地に配属されたのが由来。
ただほかの組織の権限をもらったり、別れたり、細分化されたり、業務が増えたりといろいろあって今では
「帝都の一部地域における民衆関連の公共の秩序維持」
が主な仕事になっている
公共の秩序の維持、というのは要は警察だ。民衆以外の貴族階級や議会、皇室関連、モンスター関連に学校などは別の騎士団が対応するし、馬車や道路関連、帝都含めた複数の土地にまたがる犯罪などは別の集団の管轄もかかわるといった具合で、帝都にはいくつも騎士団とかそれに類する司法機関がある。
すべてを理解している人などこの街にはいないだろう。
複雑なのだ。これでも宗教の自治権廃止などで整理されはした。まぁその代わりに宗教対策専門の騎士団が生み出されたが。
「お疲れ様です」
そう言って事務員の女性がお茶を出してくれた。
「まだかかるかな」
「団長のお説教は長いですから。何かご予定がありますが?代わりの者に手続きを任せますが」
「用事はないが、用事もなく居たい場所じゃないからね。できたら早く終わらせてほしい」
事務員の女性は笑いながらそうですね。もうしわけありません。とあやまって手が空いている人間を探しに行った。
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