第4話
「大丈夫か」
「私は大丈夫だ」
「あんた死にたいのか。もう少し考えて動けよ」
「騎士団員たるもの死を恐れてどうする!!!我々の任務がなんたるか、ってあなたか、他の者は」
ドーリーは言われて周りを見回したが、いない。
「知らん」
「はぁ、自覚がないのか。あなた腕は立つか」
「冒険者で食えるほどには」
「じゃぁ手伝え」
そう言って馬車に向かう団員。
「いいのかよ」
民間人の俺がかかわっていいのかと口でそうつぶやくが、まぁこの状態。置いとくわけにもいかない。
そう思ってブーツにいつも隠している短剣を抜き団員の後ろについて行った。
馬車の前の方の状態は「ひどい」。
頭を吹き飛ばされた二頭の馬。それを扱う御者は馬車に絡まっている。
「生きてるか。おい」
そう言いながら息を確認するドーリー。息をしてない。口の端から血を吐いている。
「死んだか」
「死んだかじゃないだろう。あんたが殺したのかもともと死んでたのかもわからんぞ。これじゃ」
「我々の任務は公共の秩序の維持だ。それにあのまま暴走していたら人が死んでいたからな」
犯人逮捕でも真実の追求でもないので、生かして捕まえる必要なし。
ということなのだが
「もう少し考えろよ。おっかねぇなぁ」
これがもし「馬が言うことを聞かなくて」とかだったら恐ろしい話だ。
相手は犯罪者とは言え自国民、そういった意識がない司法関係者はただ恐ろしい。
後ろの馬車は、大きな木の箱のようだった。
首都を走っている乗り合い馬車にも似ているが、窓が一切なく外から中が見えないようになっている。
出入口は後ろの扉だけという簡素なつくり。ドアにカギはついておらず、取っ手が鎖と錠で固定されている。
これは首都で店を回るセールスがよく使っているタイプだ。
こうなっているのは盗難防止のため。中に人間を乗せることはないので窓は基本ついていない。
窓がない真四角な箱で馬車自体が重いので遠出には向かない。だから決められた狭い範囲を馬車で回る問屋やセールスマンくらいしか使わない。
「破るか」
また剣を抜いて魔法を唱え始めた団員を
「まて。鎖だけ切れ。何が入ってるのかわかからないんだ。静かにな」
そう言って止めるドーリー。
馬車の扉は両開き。
馬車自体がひっくりかえっているから左右ではなく上下にあく。それでも手は届く。
そこで団員はドーリーに言われた通り、剣で鎖をたたき切る。
こういうことができるあたり腕はいいんだ。いろいろ無謀だが。
「俺が合図と同時にあける。あんたは後ろから。いいな」
「わかった。3であけろ」
下手にこいつに主導させるより俺がやった方がいい。
そう思ったドーリーは団員に指示。団員は扉を開けたら中が全部が見渡せるように後ろに下がり、剣に炎をまとわせる。
「1・2・3」
そう言って思いっきりドアを開けるドーリー。
そして退避。巻き込まれちゃたまらん。
中から特に何も飛び出してこなかった。
代わりに、剣に包まれた炎が映し出したのは、バラバラにされた人間の死体の山。
「俺じゃないぞ。これは」
「その言い訳は無理があるからもっとましなやつ考えておけよ。馬車吹き飛ばしたこと含めて上司はもっとましな理由を求めるぜ」
団員の子供じみた言葉。
それに対して組織人だったドーリーの助言。
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