第3話

「さて、交代してきます。ありがとうございました」

「いえいえ」

 世間話と言っても若い女の子と話すと気分がよくなる。

 若いころはそんなことなかった、俺もおじさんになったなぁ。と思いながら、話を切り上げ、先ほどの騎士団員と交代するために立ち上がった時

「おい、そこの馬車、止まれ!!速度をおとせ!!」

 先ほどの騎士団員のバカでかい声がテントまで響く。


 テントから見たのは、先ほどの騎士団員が剣を抜く姿。

 そしてもっと向こうから周りの馬車などにぶつかりながら危険な速度で暴走する馬車。

「止まらないと実力行使にでることになるぞ。ほかの馬車と人間は下がれ!!」

 この騎士団員が使っているのは魔法だ。

 効果は声が大きくなる。ただそれだけのシンプルなもの。

 しかし商店のセールや教育現場、工事現場と幅広く活躍するのでちょっとした魔法の心得がある一般人もよく覚えている。


 また騎士団員は

「警告はしたからな」

こういった場面で活用するので少しでも魔法が使えれば必修で覚えさせられる。


 馬車は騎士団員の警告を聞かず走る。

 その反応を確認した騎士団員は剣を振り、呪文を唱える。

 馬車は止まらない。あと数十秒で団員は轢かれると思ったとき、団員の剣が炎に包まれた。

「ふん」

 そして一振り、返しの二振り。

 剣は空を切るが炎はそうじゃない。剣から飛び出すように空中を飛び、暴走する馬車の馬に当たる。

 そして炎上。爆発。馬の首が吹き飛んだ。


 頭を失い勢いを失った馬。その後ろにつながれた馬車は道の真ん中で大きな音を立てながら横転。

 事前の警告のおかげで巻き込まれた馬車や人間はいないが、一歩間違えれば巻き込まれていてもおかしくはない。

「おかねぇな。命知らずもほどほどにしろよ」

 ドーリーの口からついそう出て、団員の方に走っていった。

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