第17話 童貞復権の時代は来る

しかし、童貞の頃(とは言ってもほんの数日前まで童貞だったのだが・・・)、ぶっちゃけ、女性はよほどのことがない限り男とセックスしないものだと思っていた。女たちは、AV見てシコりまくる男たちとは違って性にさほど興味はないのだろう、なんて思ってた。長い間、大変お世話になった風俗嬢やデリヘル嬢たちは、みんないやいや俺とセックスしていた。まあ、こっちは金を払っている顧客でやらなきゃしょうがないし、本当はこんなニキビ面のキモい男なんかとセックスしたくないだろうし、当たり前か。だが、この世界に来てみて、俺はなんて無知だったんだろうとあらためて気づかされた。目の前にいるサオリはまだ若い。前の世界だったら俺のことなんて相手にもしてくれないだろう。だがどうだ?こいつはいまだに失神している。上を向いて、口を半開きにして舌を出し、アヘアヘ言っている。驚いた。女は、イクと本当にアヘアヘって言うんだな・・・。


「おい、大丈夫か?」


頬をぺちぺちと叩いてみる。サオリは、んん・・・と甘い声を出した。


「もう一回♡」


「おい、嘘だろ?」


「あれれ?顔がほころんでるわよ。」


「・・・」


というわけでもう一度ヤることにした。芦ノ湖の湖畔キャンプ場、薪にするために切り倒されたのだろう杉の切株にサオリを寝かせ、上から覆いかぶさって奥を突く。亀頭が子宮口を舐めるたびに、あん、あん、とつんざく夜の声、太もものあたりにかぶりつくと、わずかに香る蜂蜜の香りが俺の肉棒に粘液の津波を与え、あの段階、めくるめく快感のステップを一歩ずつ上がっていき、テクノブレイク寸前の搾りだすような射精。


さすがに疲れたので、そのまま地面に寝ころんだ。徐々に萎びてゆく俺の息子を、月光が艶めかしく照らした。


「童貞?」


突如、サオリが聞いてきた。


「・・・ぅん」


俺の返事にはたくさんの引け目と羞恥とが含まれていた。



童貞コンプレックス、これはモテない男の病である。俺たちは無理をして虚勢を張り、女の前で威勢よくカッコつける。仕方がない!それは決して俺たちの罪ではない!この時代に流れる、あの何とも言えない、悪魔みたいな「童貞を馬鹿にする雰囲気」のせいだ!女の前でかっこつけるのは当たり前だし、それはモテない奴もモテる奴も、万国共通でみんなやっていることだ。だが、「経験」に関しては、絶対に嘘を言わない方がいい!今みたいな事後とか、セックス中に中折れした時とか、ひょんなタイミングでほろっと出てくる童貞男の「モジモジ感」、これを女は絶対に絶対に見逃してくれない!なんでこんなに彼女たちは敏感なんだろう?「経験の差」というものは如実に現れる。俺たち男には分からないが、女性には一瞬にしてバレてしまう。もし君がまだ未経験だったら(決して恥ずかしがることじゃない!決して!!)、隠さずに堂々と女の前で言うのが一番良い。「俺は童貞だ。だから何だ?」と開き直れるヤツの方がモテる。それに、童貞好きの女だっていないわけじゃないし、実際、結構な確率でいる。男たちよ!どうか、マッチングアプリや婚活界隈の醜悪なプロパガンダに騙されないでくれ!他人のコンプレックスにつけこむと儲かるのだ!やつらは男の「童貞」コンプレックスにつけこんで、高い会員費を捲き上げようと企む悪魔みたいな連中だ!地獄行き決定!だが、見てみろよ。目の前にいるサオリは、俺が童貞だという話を聞いた瞬間にぽっと顔を赤らめ、ホントに可愛らしい顔をした。あどけない、まるで少女が買ってもらったテディベアにおっぱいをあげている時のような、そんな表情。こんな表情、見たくはないか?諸君!童貞であることに自信を持つのだ!俺たちは何者にも穢されていない潔白の紳士、ナポレオンの馬、アレクサンドロスの腿なのだ!



「やっぱり。なんだかうれしい。」サオリは言った。


「おいおい、冗談だろ。普通女の子って童貞のことなんて嫌いで、目にも止まらない、犬も食わない、もし食ってしまった犬がいたとしたらその犬を憐れんで涙を流す、そのくらい童貞というものはイビられて、処刑され、圧殺され、消去されているんじゃないのか。」


「たしかに、私も前はそうだったわ。なんとなくね、童貞とか不細工とかに抱かれると負けた気持ちになるのよ。でもね、」


サオリはごくんと甘い唾を呑み込んだ。


「魅力的に見える男って、どこか冷たいのよね。」


「そんなもんなのか。それを男が言うとただの負け犬の遠吠えにしか聞こえないが、お前みたいな女の子に言ってもらえると嬉しいよ。まだ生きていたら、救われる男がたくさんいたと思う。」


そして俺はキスをした。





朝が来た。太陽は登り、サオリの味がする口の中を洗いに行こうと芦ノ湖まで歩いて行ったら先客がいた。


「キョウカ?」


「いや!来ないでよ!!」


彼女は素っ裸で水浴びをしていた。鏡餅みたいな胸をたゆませて水浴びをしている。陽光浴びた体はキラキラ光って俺の眼を焼き尽くさんばかりに輝いた。美しい。どうしてこう女性は美しいのだろう。


「あっち行って!」キョウカは林の方を指さしていやいやした。


「お、すまん。。。」


俺はもうちょい時間たってから出直そうと、踵を返した。


「ねえ、待ってよ。」キョウカの声。


「なんだー?」


「しようよー」


「何を?」


「この、イジワル」


「お前さっき、あっち行けって言ったよな?」


「・・・・。馬鹿ね。」


しょうがない奴だな、と思った。この辺の駆け引きに疎いから俺は非モテ童貞だったのだろう。ホントに、女は難しい。


朝日を浴びてのセックスは悪くなかった。キョウカの膣も日に日に締まってゆくし、俺の息子は絶好調だ。富士山ともセックスできそうなくらい、俺は盛りに盛っている。いい感じだ。悪くない。今の俺、悪くないよ。


「きのう、サオリとした?」


「・・・ああ。」


「2回したでしょ。」


「お前、寝てなかったのか?」


「ヤダ、ヤダ、ねえ、私だけを見ててほしいの。」


キョウカは俺の腕をむんずとつかむと、林の方へ向かって走り出した。


「ねえ、どっか行かない?二人で。あんな女たちのことなんて、気にする必要ないわよ。私なら、あなたの子どもをたくさん産んであげる。」


「いや、待て、キョウカ。それはダメだ。俺にはいろんな遺伝子を残さないといけない義務がある。もしお前と10人近く子どもをつくったとしても、その子たちだけに今後の人類の歴史を作ってもらうわけにはいかない!いろんな女と子どもをつくらなきゃいけないんだ、それに・・・」


「アンタ、何してるのよ。」


ふいに鋭い声が飛んだ。


見上げると、揉み合う俺たち2人の前に、ミサトが立ちはだかっていた。


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