第46話 鳥オタクが勝負を仕掛けてきた!

 お久し振りです!


 最近、コンテストでわたわたしていたせいで、すっかり更新がおろそかになっておりました。


 といっても、バードウォッチングにはちょこちょこと行っておりました。


 海沿いで、電線にとまるチョウゲンボウに出会ったり。

(写真はコチラ→https://twitter.com/miyakusa_h/status/1593567660347793408)


 野鳥公園で、冠羽かんうがぴゅっと伸びているのが特徴のタゲリに出会ったり。

(写真はコチラ→https://twitter.com/miyakusa_h/status/1594257885315596288)


 家の近くで、キツツキの仲間のコゲラに出会ったり。

(写真はコチラ→https://twitter.com/miyakusa_h/status/1596111684627668993)


 鳥たちとの出会いを楽しんでおりました。


 さて、今回も、買い物がてらにいつものコースを散歩しにいきましょうか。


 ……と、カメラをぶらさげて行ったのですが、残念ながらほとんど鳥はいませんでした。カラスとスズメしかいませんでした。


 代わりに、変な人に出会いました(まぁ、私も端から見れば変な人なんですけどね……)。


 それは、いつもの田んぼ道を歩いていた時のこと。


「前方に、人がいる……」


 私が行こうとしている道の先に、怪しい男性がいます。突き当たりの川縁に立って、うろうろしながら川を見ています。散歩中の人かな。でもよく見ると自転車がかたわらにとまっています。なにをしているのかな。ここはとりあえずスルーしよう。


 私はスルースキルを発動させて、通り過ぎることにします。突き当たりに差し掛かったところで、軽く会釈をして、できるだけ距離を取りつつ、左側に曲がってそそくさと歩いていこうとした……その時。


「鳥ですか?」


 ピンポイントで声を掛けられたーーーっ!?


「は、はい」


 目が合ったら勝負の始まりだって、どこかのゲームが言ってた気がする!


 私は振り返って立ち止まり、カメラを構えます。


「なにかいましたか?」

「いえ、今日はまだなにも見てないですね」


 などと言いながら、カメラの履歴を確認して、最初に出す鳥を選びます。


 よし、君に決めた!


「この前撮った写真ですけど、こんなのがいましたよ」


 とりあえず、先日野鳥公園で撮った、冠羽がぴゅっと伸びているこの鳥で相手の出方を見ましょう。

 そう思ったら……。


「タゲリですね。俺も……」


 あっさり正体を見破り、男性もスマホを取り出して、こちらに見せてきました。映っているのは、同じタゲリではありませんか!


 こいつ、できるな……!


「こんなのもいたよ」


 今度は男性のターン。スマホを操作して再びこちらに見せてきます。白黒の鹿の子模様の鳥。こいつは……。


「ヤマセミですね」

「そう。よく知ってるね」


 いきなりヤマセミを出すとは。なかなかの強者だ。そしてこれはなんの鳥か言わずに画像を見せて相手の力量をはかる鳥勝負ということですね。わかります。


「蔵山(仮)で見たんだけど、ここから飛んできたんじゃないかなと思ってるんだよ。それで、この橋の辺りがいいポイントだなと思って、ブラインドして待ち伏せようかなと思ってたんだよね」


 おぅ。やはり相手はかなりのエリートバードウォッチャーだと見える。

 ここでひるんだ私の隙をついて、さらに相手は口を開きました。


「こんなのもいたよ。わかるかな?」


 そう言って見せてきたのは、尾が長くて青いアイリングがある鳥。


「サンコウチョウですね」

「そう。詳しいね」

「ここらへんにいるんですか?」

「蔵山(仮)にいるんだ。ほかにもアカショウビンとかもいるよ」


 なんと、思いも寄らない情報を聞き出すことができました。私の見たいと思っていたサンコウチョウとアカショウビンが、近場の蔵山(仮)にいるとは。


 ちなみに蔵山(仮)は、第24話で紹介した地元の小さな山で、真夜中に底なし池から蔵が浮いてくるというちょっと不気味な伝説がある場所です。私はあそこであまり鳥を観察したことがなかったので、正直、鳥はあまりいないと思っていました。まさかサンコウチョウとアカショウビンが見られるとは。


 サンコウチョウは、第7話でちらっと紹介した美しい声の鳥です。「月、日、星、ホイホイホイ」と聞きなされる特徴的な声でさえずります。スズメくらいの大きさで、目の周りに鮮やかな青いアイリングがあり、オスは尾が長いです。


 アカショウビンは、カワセミと同じ仲間で、くちばしが長くて全体的に赤色をした鳥です。「キョロロロロ……」と尻すぼみな鳴き声を出します。私は姿も見たことがなく鳴き声も聞いたことがないので、一度見てみたい鳥の一種です。


 どちらとも夏鳥だから、来年の夏に蔵山(仮)へ探しに行ってみよう。


 って、すっかり相手のペースに呑まれて関心している場合ではありません。ここで私も反撃しなければと、カメラの履歴をさかのぼります。


「他に撮ったものある?」

「えぇっと、ここらへんでオオタカがいましたよ」


 私の切り札! 第17話で紹介したオオタカを出すことになろうとは!

(ちなみにここで私は先に鳥の名前を言ってしまうという痛恨のミスをしました。)


「へぇ、オオタカ。すごいね」


 猛禽類の一撃!

 なんとか一矢報いたのも束の間、再び相手はスマホを操作し始めます。


「俺はコウノトリも追っているんだよ。ほら」


 ここで特別天然記念物のコウノトリ出てきたーっ!?

 優雅に飛んでいる写真を見せられ、「へぇー、すごいですね!」と感嘆する私。い、いや、コウノトリなら私も見たことあるし! 第19話で紹介したし! しかし、私のカメラに保存されているはずの画像が出てこなかった……!


 ここで勝負終了! その後、少し雑談した後、その男性とは別れました。


 ふぅ。観察会以外では、初めて通りすがりのバードウォッチャーに話し掛けられましたが、なかなかの良い勝負でした。


 とりあえず、バードウォッチャーは目が合うと、互いの写真を見せ合って勝負(?)が始まるということがわかりました。次は戦いを有利に進められるよう、カメラに保存してある写真のデータを整理しておこうと思います。

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