第38話 ホバリングはすごい!(ノスリ)

 前話でアオスジアゲハを撮った後のこと。


 私は一人、いつものコースへバードウォッチングに出掛けた。


「今日はなにが見られるかなー?」


 などと思いながら歩いていると、すぐに出会いはやってきた。


「あれは……トビ?」


 家を出てまだ三分も経っていない。田んぼ道へ差し掛かる前の道で、上空に飛ぶ一羽のタカを見つけた。例のごとく、最初はトビかと思った。けれども、腹面が白っぽい。


「トビじゃない!」


 私は道の端に寄って、カメラを構えた。ズームをして、画面上に映された鳥を撮りながら観察する。茶色っぽい体で、腹面は白、そしてお腹周りに茶色い腹巻きのような模様がある。


「ノスリだ」


 ノスリはしばらく、上空を行ったり来たりしていた。よく見ると、二羽いた。つがいだろうか。一羽はすぐにどこかへ飛んでいってしまったが、もう一羽は田んぼのところにとどまっているようだ。


 私ははやる気持ちを抑えながら足早に歩いて、田んぼ道へと向かった。田んぼの近くに着くと、おそらくさきほどのノスリがいた。翼を羽ばたかせながら、空中の一点にとまっている。ホバリングだ。


「ノスリもホバリングするんだ」


 ホバリングといえば、第9話や第12話で登場したチョウゲンボウの特権だと思っていた。けれどもあとで調べたら、ノスリもホバリングをしながら獲物を探すことがよくあるらしい。


 あと、私は以前、ノスリは冬にやってくる渡り鳥だと書いていたが、どうやら一部誤解があったらしい。ノスリは冬になると全国に渡ってくる個体もいるが、北海道や本州中部以北、四国などでは繁殖していて、留鳥としても見られるそうだ。つまり、渡り鳥派と留鳥派がいるらしい。私が今回見たノスリは、留鳥派のノスリだろう。


 上空にいるノスリは、空中の一点に止まりながら、田んぼに獲物がいないかを探していた。個人的に、チョウゲンボウよりホバリングは上手くないように見えたが、それでも高度な飛行技に、思わず見入ってしまった。空中で止まっているから、カメラでも撮りやすい。


 しばらくするとノスリは、田んぼの向こうへ行ってしまった。残念ながら狩りの瞬間を見ることはできなかったが、獲物を探しながら飛ぶノスリの姿を写真に収めることができた。


 ノスリはずんぐりしていて、ちょっと可愛らしい感じの猛禽だと思っていたが、意外な特技を持っていた。新しいノスリの魅力を観察することができて、満足したバードウォッチングだった。



追伸

その時に撮ったノスリがこちら。

https://twitter.com/miyakusa_h/status/1533771625262239749

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